長文が二つある場合、読解問題用の長文は一番目の長文です。
1文明とは何かを地球システム論的に考えると、「人間圏を作って生きる生き方」となります。人間圏の誕生がなぜ一万年前だったかというのは、気候システムの変動に関わってきます。2気候システムが現在のような気候に安定してきたのは一万年前のことです。それに適応してその頃、我々はその生き方を変えたんですね。
3人間圏を作って生きる生き方というのは、じつは農耕牧畜という生き方です。それ以前、人類は狩猟採集という生き方をしてきた。狩猟採集というのはライオンもサルも、あらゆる動物がしている生き方です。4したがってこの段階までは人類と動物の間に何の差異もなかった。これを地球システム論的に分析すると、生物圏の中の物質循環を使った生き方ということになります。生物圏の中に閉じた生き方です。
5それに対して農耕牧畜はというと、たとえば森林を伐採して畑に変えると、太陽からの光に対するアルベド(反射能)が変わってしまう。ということは、地球システムにおける太陽エネルギーの流れを変えているわけです。6また、雨が降ったとき、大地が森林でおおわれているときと畑とではその侵食の割合が異なります。別の言葉でいえば、そこに水が滞留している時間が違ってくる。すなわち、エネルギーの流れだけではなく、地球の物質循環も変わるということです。7これを地球システム論的に整理して概念化すると、人間圏を作って生きるということになる。人類が生物圏から飛び出して、人間圏を作って生き始めたために、地球システムの構成要素が変わったわけです。
8ところで、先ほど一万年前に人間圏ができたのは気候が変わったからだと言いました。そういう時期は最近の一〇〇万年くらいをとっても何回かあったでしょう。9人類の誕生以来の歴史七〇〇万年ぐらいまで遡ってみれば、一万年前と同じような時期が何度もあったはずですから、たとえばネアンデルタール人が農耕を始めてもよかったことになる。でも、彼らはそうしなかった。0農耕牧畜という生き方を選択し、人間圏を作ったのは、われわれ現生人類
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