a 長文 12.1週 tu
浅野あさのたちのチームは今、燃えも ている。」
 山口先生の声が教室に響きひび 渡っわた た。今日の朝の会で、わたしたちDチームはみんなの前でほめられた。わたしたちの学校では、四年生になると女子はミニバスケットのクラブ活動があり、毎日放課後ほうかご、体育館で練習をしているのだ。
 Dチームは、上から四番目のチームで、公式試合(じあい)には出られない。練習の時も、ゴール下はなかなか使えず、パス練習が多い。Cチームを負かして、自分たちがCチームになれば試合しあいに出られるのだがそのかべ厚かっあつ  た。
 チームの五人のうち、三人は
「どんなにがんばったって、試合しあいになんか出られないし。」
「先生もコーチも、A、Bチームばかり力を入れているみたいだし。しかたがないけど。」
という感じで、なんとなくやる気が出ない様子だった。
 キャプテンであるわたしと、ふくキャプテンのみちるちゃんは、何とかがんばってCチームに昇格しょうかくしたいと思っているけれど、チームワークが今ひとつなので、うまくいかないのだ。わたしたち二人しか来ない日もあって、Eチームに混じっま  て練習試合じあいをしたくらいだ。わたしも少しあきらめかけていた。
 ところが、先月のことだ。みちるちゃんが、
「ねえ、このままじゃ、いつかEチームにも抜かさぬ  れてしまうかも。がんばって、朝練しない?」
と言い出した。みんな一瞬いっしゅん、えーっという迷惑めいわくそうな顔をした。
 しかし、みちるちゃんはひるまず、強い意志いしのこもった目でみんなを見つめ、
わたしたちだって、試合しあいに出たいよね?」
と問いかけた。わたしが思わず、大きくうなずくと、他の三人もつられたように首をたてにふった。
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 次の日から、三十分の朝練が始まった。三十分早く来るのも実は大変たいへんだ。特にとく 朝が弱いわたしとふくちゃんは、朝ごはんもそこそこに、髪の毛かみ けがはねたまま走って登校するようなあわただしさだった。
「朝練前にランニングしちゃうようなものだね。」
 だれもいない早朝の体育館は、すべてがわたしたちのものだ。シュート練習が思う存分おも ぞんぶんできるし、ドリブル練習も何本もできる。声が響くひび のでいやでもテンションが上がっていく。一日目にして、わたしは、これはいけるかもしれないと思った。なんだか昨日きのうまでのDチームではないみたいだ。
 翌日よくじつからは、山口先生がのぞきに来た。あいさつだけすると、体育館の入口で黙っだま て見ている。ふくちゃんのロングパスを取りそこねたわたしに、先生は転がったボールを拾うと、強めのチェストパスで渡しわた てくれた。

(言葉の森長文ちょうぶん作成さくせい委員会 φ)
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