怪我の功名
1「怪我」は傷のことなんだけど、ここでは、あやまちとか過失の意味をさすんだ。「功名」はてがらとかよい結果のこと。つまり、失敗をしたのにそれがかえってよい結果になった、ということ。また、なんの気もなくやったことが、たまたまよい結果になった、ことでもある。
2――Oさんは、でかけようとして玄関をでた。バス停の近くまでいったところで、財布をわすれたことに気づいた。あわてて家にもどり、財布をもってでてきたが、バスはいったあとだった。つぎのバスは、十五分たたないとこない。3「だいじな約束なのに、これじゃ、おくれてしまう」
Oさんは、わすれ物したことをぼやいていた。つぎのバスに乗って、交差点まできた時だ。パトカーやら救急車がきて、大さわぎだった。窓から見たOさんはびっくりした。4乗りおくれたバスがダンプカーと衝突している。けが人もでたようだった。
「いやあ、よかったあ。もしわすれ物をしていなければ、あのバスに乗って。いまごろ……。」Oさんは、ほーっと大きな息をついた。
5こんなできごとを「怪我の功名」というんだ。
ドライ・クリーニングの方法を世界ではじめて見つけたのも、さいしょは失敗からだった。見つけた人は、フランス・パリの仕たて屋、ジョリー・ベランさんだ。6ドライ・クリーニングとは、水を使わないで、物質をとかす液体を使ってせんたくする方法だ。一八四八年のある日、ベランさんはテーブルのランプをひっくり返してしまった。ランプのオイルがテーブルにこぼれ、奥さんがせんたくしたばかりのテーブルクロスを、ひどくよごしてしまった。
7「まいったなあ。うちのやつが帰ってくるまでに、きれいにしておこう。」
べランさんは、よごれたテーブルクロスを手にとった。見ると、オイルがこぼれた方がまっ白で、きれいになっている。これはどういうことか。8べランさんの頭に、ひらめくものがあった。
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