急がばまわれ
1いそぐ時には、少しくらい危険があっても、近道をとおりたくなる。けれどそれが失敗する原因になる。だから、時間がかかってめんどうでも、安全な道やたしかな方法を選んだ方が、けっきょくは得なことになるんだ。
2ことわざのもとになったのは、平安時代に源俊頼が作ったこんな和歌だ。
武士の矢馳の船ははやくとも急がばまわれ瀬田の長橋
歌の意味は、大津へいくのには、びわ湖の岸の矢馳からでる舟に乗っていけばはやい。でもいそぐのなら舟にのらず、湖岸の道をとおり瀬田川の橋を渡って陸の道をいった方がいいよ、というんだ。
3矢馳というのは地名で、矢橋とも書く。滋賀県草津市のびわ湖の岸のあたりのことだ。古くからここには、大津までの渡し舟の便があったんだ。陸の道をいくと、びわ湖の南岸をぐるっとまわり、瀬田川の長い橋を渡らなければならない。かなり時間がかかる。4それにくらべ、湖上をいけば近道になる。むかいの大津まで直線距離でいくから、うんとはやかったんだ。
しかし渡し舟でいくのは、いろいろ危険があった。ちょっと強い風が吹いたりすると、流されてなかなか大津につけない。5また、この舟は小さなものだったから、大きな波にかんたんに転ぷくすることもあったんだ。いそぐので舟に乗ったのに、大津につけずひき返したり、舟がひっくりかえっておぼれ死んだり、こわい目にあう人がたくさんいた。
6この歌の中で「急がばまわれ」のことばだけがひろまっていき、ことわざとしていまものこっているんだ。これは、さいしょは道についていったんだけど、その後は生活のいろんなことについてもいわれるようになったんだ。
7だれでも、少しでもはやくしごとをすませたいから、ついはやくできる方法をやろうとする。でもいそいでやろうとすれば、はや
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