a 長文 8.3週 si
 ニトログリセリンのグリセリンは、石けんをつくるときにできる副産物ふくさんぶつです。ねばっこいえきで、くすりや、機械きかいのうごきをなめらかにするためのあぶらとしてつかわれます。硝酸しょうさん変化へんかさせたグリセリン」というのが、ニトログリセリンのいみですが、じっさいには、とくべつのそうちで、こい硝酸しょうさん硫酸りゅうさんをまぜたえきに、水分をとりさったグリセリンをそそいでつくります。
 これくらいのことは、技術ぎじゅつ雑誌ざっしにしたしんでいるアルフレッドには、とっくにわかっています。
(つくりかたがわかっても、ばくはつをコントロールすることには役だたやく  ないなあ……。)
 そうおもいながら、アルフレッドは、いくどか、小さなばくはつ実験じっけんをこころみました。けれども、ニトログリセリンは、うんともすんともいわないか、とんでもないときにばくはつして、きもをひやさせるかです。
「いずれにしても、導火どうか線を用いなければならないよね……。」
 アルフレッドが、ちえをかりにいったジーニン先生は、大学の研究けんきゅう室でいいました。
 導火どうか線は、黒色火薬かやくを紙と糸でまいてつくった線です。手もとに火をつけると、シューッともえていき、ばくやくをばくはつさせるのです。
「……そうなんです、先生。まさか大量たいりょうのニトログリセリンを、てつのはりでばくはつさせるわけには、いきませんものね。いのちあってのものだねです。」
「しかし、導火どうか線では、ばくはつしない……と。あたえるショックが小さすぎるのかなあ。」
「そうかもしれません。といって、導火どうか線をうんと太いものにすると、もちはこびのとき、きけんですし……。」
 アルフレッドは、そうこたえながら、「あたえるショックを強めるには?」と、ノートにメモしました。
 
(「ノーベル」大野すすむちょより)
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