a 長文 3.1週 se
「ハッピバースデートゥーユー。」 
誕生たんじょう日が来るたび、わたしはお母さんから自分の生まれた時のお話を聞きます。毎年同じ話を聞いても、なぜかまた聞きたくなるのです。お母さんは、 
「あなたが生まれたときはねえ。」 
となつかしそうな顔をします。そして、 
「なかなか逆子さかごがなおらなくて、逆子さかご体操たいそうをいっしょうけんめいしたけれど、直前までなおらなかったの。でも、生まれそうになっておなかが痛くいた なって病院びょういんに行くと、なぜかくるっとなおっていたのよ。」 
笑いわら ます。わたしは、赤ちゃんがおなかの羊水ようすいの中でくるっとシンクロナイズドスイミングみたいにまわっているのを想像そうぞうします。 
 ときどき、お父さんも話に入ってきて、 
「あの時は初めてはじ  体験たいけんだったから、お父さんもあたふたしたよ。お母さんは痛いいた 痛いいた と言うし、呼び出しよ だ ベルを押しお てもお医者いしゃさんがなかなか来てくれないし。 生まれてきちゃったらどうしようと生きた心地がしなかったよ。」 
などと早口でまくし立てます。その様子ようすを見ると本当にあせっていた様子ようす想像そうぞうできます。 
 おばあちゃんにも聞きました。 
「それがねえ、いとこのけいちゃんやしんちゃんと比べくら ても、信じしん られないくらい大きな産声うぶごえだったのよ。おばあちゃんたちは廊下ろうかで今か今かと待っま ていたのだけれど、厚いあつ 分べん室のとびらをつきぬけるような元気なオギャーだったわよ。」 
大笑いおおわら していました。そして 
「先生や看護かんごさんが、もう目をあいてますよと言ったのも忘れわす られないわねえ。」 
付け加えつ くわ ました。すると、お母さんたら 
「そうそう。それからね、生まれたとたん、ぴゅーっとオシッコしたんだったわ。」 
などと言うのです。わたしはこの話だけははずかしいので、いやだ
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なあと思います。 
 去年きょねんまではあまりわからなかったけれど、今はこんな風にわたしの生まれたときの話をみんなが覚えおぼ ていてくれて、聞かせてくれるというのは幸せしあわ なことだなあと思います。そして生まれたとき、みんなに見守らみまも れていたのだなあとあたたかい気持ちきも になります。ときどき、お父さんやお母さんに反抗はんこうしたり、わがままなことを言ったりしてしまうわたしですが、この話を思い出すと、やっぱりお父さんとお母さんの子でよかったなあと思います。

言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいん会 φ)
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