1パストゥールは炭疽菌のいる血液を一滴だけとって、これを尿の中で培養しました。数日後、この培養液からまた一滴だけとって、二番めの培養液の中におとしました。
そして数日後、またおなじことをくりかえしました。
2いちばん最初の一滴の血液は毎回うすめられているのですから、この作業をなんどもくりかえしていけば、最初の一滴の中にいた微生物はとうぜん消えてしまうはずです。
3パストゥールは、このようにして二十回もうすめてきた培養液から、ほんの一滴だけとって動物に注射しました。すると、動物はたちまち炭疽病にかかることがわかりました。4最初の培養液も、最後の培養液も、病気をおこさせる力はおなじなのです。うすめるたびに炭疽菌が繁殖したにちがいありません。そうでなければ、最後の培養液は何百倍にも弱まっているはずですから。
5こうして、この小さな棒状のものが、炭疽病の原因だということがわかりました。
もし環境をかえたら、炭疽菌はどのような反応をしめすのでしょう。
6パストゥールは、ニワトリが炭疽病にかかっている羊といっしょにいても、決して病気にならないこと、また、ニワトリの体温が高いことを知っていました。7そこで、数羽のニワトリを氷につけてひやしてから、炭疽菌をあたえてみました。どうなるか想像してみてください。
8しばらくすると、ニワトリはみんな病気にかかったのです。
パストゥールはすぐに反対の実験をしてみました。
ウサギは炭疽病にかかりやすい動物です。9何匹かのウサギをあたたかいお湯につけて体温をあげてみました。するとどうでしょう、ウサギは病気にかからなかったのです!0
「細菌と戦うパストゥール」(ブラーノ=ラトゥール)偕成社
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