a 長文 2.1週 se
「もうお肉取っと てもいい?」 
 十月に入るころから、ぼくのうちでは日曜日の夕飯ゆうはんはほとんどなべ料理りょうりです。毎週となると、あきるのではないかと思われそうですが、なべ料理りょうりと言ってもいろいろあるのであきることはありません。ぼくのお父さんは九州きゅうしゅう博多はかた出身しゅっしんなので、 
「やっぱり水炊きみずた が一番うまいな。」 
と、いつもむね張っは ています。やわらかいとり肉と、ものすごくおいしいスープを味わうあじ  とぼくもそうだなあと思います。 
 でも、今夜はお姉ちゃんがリクエストした「かいせんキムチなべ」です。かいせんというのは、海でとれる魚や貝のことですが、ぼくのうちでは「かいせん」の時もぶたバラ肉をいっしょに入れます。お母さんに聞いた話では、キムチなべにもいろいろなからさがあって、大人でもヒーヒー言うくらいからい本場のチゲなべから、中辛ちゅうからマイルドなキムチなべまでランクがあるそうです。うちは、ぼくがまだあまりからいのは食べられないので中辛ちゅうからマイルドですが、五年生になったら、辛口からくち挑戦ちょうせんしたいと思っています。
 なべをやると、部屋へや中があたたかい蒸気じょうき包まつつ れて、エアコンもいりません。暑がりあつ  のお姉ちゃんは、半そでになってしまうくらいです。なべに材料ざいりょう順番じゅんばんに入れたり、煮えに たものを教えたりする人を「なべ」というそうですが、うちのなべはお父さんです。お父さんはみんなに、 
「長ネギはまだだ。いいと言ってからだ。」 
白菜はくさいがとろとろになったぞ。」 
豆腐とうふをくずさないように取れよと  。」 
「そのはまぐりは、取れと ているぞ。」 
「よし、そろそろ雑炊ぞうすいだな。」 
などと指図さしずします。その様子ようすはちょっといばっていて、まるで会社の部長ぶちょうとか社長みたいです。でも、お父さんの言うとおりにやる
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絶対ぜったい失敗しっぱいしないのでプロだな、と思います。 
 なべ料理りょうりの時は、いつもの夕飯ゆうはんよりみんなおしゃべりな気がします。ぼくがそう言うと、お母さんは、 
「一つのなべをみんなでつつくから、連帯れんたいかんが生まれるのよ。」 
と言いました。その時ちょうどおねえちゃんが、
「見て、この白菜はくさい連帯れんたいかんが生まれてるよ。」 
と、キムチのスープで赤くなった白菜はくさいをつまみあげました。それは、はしっこがつながっていて、ぼくの家族かぞくと同じく四切れが万国旗こっきのように連なっつら  ていました。お母さんはあせって、 
連帯れんたいかん大事だいじ!」 
とごまかしました。湯気ゆげ向こうむ  でお父さんも笑っわら ていました。

言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいん会 φ)
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