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 ワインはグレープジュースですが、姿すがたをかえたグレープジュースであることを、みなさんはよく知っていますね。グレープジュースはあまいのにワインはアルコールのあじがします。時間がたつと変化へんかするこのような現象げんしょうを、発酵はっこうとよんでいます。
 しかし、どうして発酵はっこうがおこるのだろう? パストゥールの問題もんだいはここにありました。
 当時の最ももっと 偉大いだい学者がくしゃたちも、グレープジュースはどんな生物せいぶつのたすけもかりずに自然しぜんにアルコールにかわると主張しゅちょうしていました。ところがパストゥールは、グレープジュースそのものが自然しぜん発酵はっこうすることはけっしてないと主張しゅちょうしました。べつの役者やくしゃ舞台ぶたい登場とうじょうしているはずである、とかれはいうのです。この役者やくしゃはたいへんに小さいため、顕微鏡けんびきょうでしか見ることができないもので、かれは酵母こうぼとよびました。
 パストゥールは、密封みっぷうしてあたためたグレープジュースは発酵はっこうしないことを証明しょうめいしてみせました。酵母こうぼが作用しなければ、ジュースはワインにはなれないのです。酵母こうぼはジュースの中にふくまれるとうを食べながらものすごいいきおいで繁殖はんしょくします。とうを、アルコールと炭酸たんさんガスに分解ぶんかいします。つまり、アルコールというのは、小さな生物せいぶつによるとう消化しょうか作用の結果けっかなのです。
 病気びょうき問題もんだいとはちがうじゃないか、とみなさんはいわれるかもしれません。ところが、ワインにも病気びょうきがあるのです。すっぱくなったり、くさってあじがかわったりすることです。発酵はっこうがひとりでにおこると信じしん ているかぎり、ワインに病気びょうきがあることや、まして、その病気びょうき戦うたたか ことができるなどと、だれも考えてみないでしょう。
 ところがパストゥールは、これらの病気びょうきは、いろいろな酵母こうぼ酵母こうぼ自身じしんをやしなうためにワインを変化へんかさせることが原因げんいんであることをしめしました。
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 パストゥールは、こうして発酵はっこうにはそれぞれのとくべつな酵母こうぼがあって、ワインをにかえたり、牛乳ぎゅうにゅうをチーズに、麦芽ばくがをビールにかえるはたらきをするのだということを証明しょうめいしたのです。
 
 「細菌さいきん戦うたたか パストゥール」(ブラーノ=ラトゥール)偕成社かいせいしゃ
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