1ワインはグレープジュースですが、姿をかえたグレープジュースであることを、みなさんはよく知っていますね。グレープジュースはあまいのにワインはアルコールの味がします。時間がたつと変化するこのような現象を、発酵とよんでいます。
2しかし、どうして発酵がおこるのだろう? パストゥールの問題はここにありました。
当時の最も偉大な学者たちも、グレープジュースはどんな生物のたすけもかりずに自然にアルコールにかわると主張していました。3ところがパストゥールは、グレープジュースそのものが自然に発酵することはけっしてないと主張しました。べつの役者が舞台に登場しているはずである、とかれはいうのです。4この役者はたいへんに小さいため、顕微鏡でしか見ることができないもので、かれは酵母とよびました。
パストゥールは、密封してあたためたグレープジュースは発酵しないことを証明してみせました。5酵母が作用しなければ、ジュースはワインにはなれないのです。酵母はジュースの中にふくまれる糖を食べながらものすごいいきおいで繁殖します。糖を、アルコールと炭酸ガスに分解します。6つまり、アルコールというのは、小さな生物による糖の消化作用の結果なのです。
病気の問題とはちがうじゃないか、とみなさんはいわれるかもしれません。ところが、ワインにも病気があるのです。7すっぱくなったり、くさって味がかわったりすることです。発酵がひとりでにおこると信じているかぎり、ワインに病気があることや、まして、その病気と戦うことができるなどと、だれも考えてみないでしょう。
8ところがパストゥールは、これらの病気は、いろいろな酵母が酵母自身をやしなうためにワインを変化させることが原因であることをしめしました。
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