1最近、料理を趣味とする人が増えたが、初心者とプロとで一つ大きく違っていることがある。初心者の場合は本や自分のレパートリーの中から、まず自分のつくりたいものを決め、必要な材料を買いにゆく。2材料の中で一つでも手に入らないものがあれば、どこまでも探しにゆく。これに対してプロの料理人は、まず市場をのぞきにゆくという。そしてその日に入荷した材料の中から良くて豊富な旬のものを見つけると、それを中心にして活かす料理の設計がそれから始まる。
3初心者の場合は技術からの発想である。最初に手持ちの技術と設計があり、それに必要な資源を求める。これに対して、プロのほうは、資源からの発想というべきであろう。4最終目標についての大まかなイメージはあろうが、設計が初めからきまっているわけではない。まず手に入れられる、資源を前提にして、それを活用するための技術がそれから決まるのである。
5資源からの発想が可能なためには、レパートリーが広く、しかも自由にそれを応用し得る能力が必要である。だが結果的にはその時期ごとに最も良い材料で安く良いものをつくることができる。
6これまでの近代産業技術は、つねに技術からの発想だったといえる。技術開発も、はじめに既存の技術があり、それをいかに修正するかの問題であった。設計図が先にあり、それに必要な資源は世界中から運んできた。7石炭の豊富なところで始まった技術が全く石炭のないところへ導入されることもしばしば見られることであった。地元に他の資源があってもそれが既存の技術に合わなければ一切かえりみられず、ひたすら既存の技術に適する資源を追いもとめてきたのである。
8その結果、石油やウランなど地域的に偏在のはげしい資源への過度の依存が起こり、それをめぐって各国がしのぎをけずり、国際的な政情の変化に一国の経済基盤が揺り動かされるようになったことは、今のエネルギー問題が雄弁に物語っている。9そして今、有力な代替資源が見当たらないまま、石油資源の枯渇は目に見えはじめている。
だが資源は本当にないのだろうか?
エネルギー資源にせよ、鉱物資源にせよ、最近騒がしくいわれる
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