二番目の長文が課題の長文です。
1先進国の後を追いかける途上国経済と、世界の先頭を走る先進国経済のもっとも重要な差は何かというと、「途上国経済では物まねができたけれども、先進国経済では自分で新しい知識を創造しないとそれ以上の発展ができない」ということである。2途上国の有利な点は、第一に、先進国モデルが存在し、容易に産業化のための目標がみいだせること、第二に、先進国から技術を導入できること、そして第三に、賃金など全体的なコストが先進国に比べて有利であることなどである。
3このような有利性が存在しているかぎり、自らオリジナルな技術や知識を創造する必要性はそれほど高くない。先進国から使える技術を輸入し、それに安い賃金の勤勉な労働力を張り付けるだけで競争力を身につけることはできるだろう。4もっとも、これとてどこの国にでもできるほど簡単なことではないが、日本や現在急成長中の東アジア諸国はいずれもこのシナリオで成功してきた。
しかし、日本についていえば、これらの好条件はすべて消滅したといってよいだろう。5十年ほど前に、日本経済は歴史的なコスト条件の逆転を経験した。またインプット拡大による成長にも人口の高齢化、労働力人口の減少、貯蓄率の低下などの理由から多くを期待することはできない。6その結果、日本は先進国の宿命すなわち自らの行く先を自らの創意工夫で切り開かなければならないという宿命を、好むと好まざるとにかかわらず背負うことになったのである。
7日本の社会経済体制は、欧米に追いつき、追い越すという明治以来の国策にそって形成されてきた。たとえば、日本の教育制度は欧米の先進的知識を詰め込むことを目指して発達してきた。これはすばらしい戦略であった。8欧米と日本の間に、科学技術や近代思想などの点で大きな知識のギャップがあったのだから、まずはこのギャップを一刻も早く埋めることが必要であったし、そうすることがキャッチアップを効率的に進める唯一の方法であった。
9しかし、日本がキャッチアップを終えた今となっては話は変わってくる。外来の知識を学ぶだけでは必ずしも独創的な知識は生まれない。日本の学校教育(とくに義務教育)はすばらしいという説があるが、それは少なくとも今日的観点からはとんでもない誤解である。0たしかに、先進国に追いつく目的のために、先生が生徒に
|