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 地球上の二酸化炭素は、大気と陸地、海洋とのあいだを出入りしています。
 陸地の植物は、光合成による無機物からの有機物生産(総一次生産といいます)の結果、一年に炭素換算かんさんで一二〇〇億トンの二酸化炭素を大気からとりこんでいますが、同時に呼吸のために一一九六億トンを排出はいしゅつしています。森林破壊はかいなどの土地利用変化で一六億トンを排出はいしゅつしていますが、植林などをふくむ陸地での吸収で二六億トンの炭素を大気から固定しています。つまり陸地では、降水中の炭素量二億トンもふくめて一六億トンを大気からとりこんでいることになります。海洋は、さしひき一六億トンを大気から吸収しています。
 一方、石油、石炭など化石燃料の燃焼によって、六四億トンの二酸化炭素が排出はいしゅつされますが、吸収はありません。その結果、自然のバランスをこえて、さしひき三二億トンの炭素が排出はいしゅつされて大気中の二酸化炭素を増やしつづけ、これが地球温暖化をひきおこしているとみられます。
 バイオマスは、木を切って燃やして二酸化炭素を排出はいしゅつしても、植林をすれば、いずれはまた、大気中の二酸化炭素を光合成で固定します。このようにバイオマスは、大気の炭素量に影響えいきょうをあたえないことから、カーボン・ニュートラルであるとみなされています。バイオマスは、温室効果ガスの排出はいしゅつがないカーボン・ニュートラルなエネルギー源として、地球温暖化対策の重要な柱のひとつになっています。
 世界の多くの国々は、バイオマスのエネルギー利用で二酸化炭素の排出はいしゅつを減らす政策をすすめています。二〇〇二年の「持続可能な開発に関する世界首脳会議」では、今後の実施じっし計画のなかで、バイオマスをふくむ再生可能エネルギーの利用促進そくしんが合意されました。
 日本でも、同年に政府がバイオマス・ニッポン総合戦略を作成して、各地にバイオマスタウンをつくるなど、バイオマス利用をすすめています。
 バイオマスは太陽エネルギー、小水力、風力、地熱などとならんで日本では新エネルギーとよばれ、化石エネルギーや原子力に対して新しいエネルギー源とされていますが、もともとこれらのエネ
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ルギーは昔から使われてきたものを新しい技術でより効率よく、多様な形で利用しようとするものです。
 消費してもつぎつぎとまた生みだすことができる資源を、再生可能資源とよんでいます。再生可能エネルギー源は、バイオマスのほかに太陽光や風力、水力などいろいろな自然エネルギーがありますが、工業原料にもなるのはバイオマスだけなので、エネルギーと原料と二重に期待されているわけです。
 海外でも、バイオマスは化石エネルギーの消費を減らす重要な柱とみなされています。国際エネルギー機関(IEA)は、二〇二〇年の世界エネルギー需要じゅよう予測をしています。図のように、バイオマスと廃棄はいき物の割合は、世界のエネルギー需要じゅようの約一〇%になっています。図では、太陽エネルギー、風力などがその他の再生可能なエネルギーになっており、バイオマスも化石系のものをふくむ廃棄はいき物といっしょにしめされています。そして、再生可能エネルギー全体のなかでは、バイオマスが約七五%を占めるし  ことになると予測されています。
 バイオマスを生かすには、その特性をフルに利用することが大切です。物質としてくりかえし使えばそれだけ、生産に投入したエネルギーはより有効利用できますし、うまく組み合わせると全体としての経済性も高まります。
 バイオマスの強みを生かして、日本の資源を徹底的てっていてきに活用し、化石資源を節約して、地球環境かんきょうをよくしたいものです。

(木谷収『バイオマスは地球環境かんきょうを救えるか』による)
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