1日本人には、ボランティア精神が希薄で、ボランティアのシステムを社会的に定着させるのは困難ではないかとの意見がある。しかし、私は決してそうは思わない。
2アメリカの場合、ボランティア精神、相互扶助精神が非常に発達していて、成人の二人に一人は、なんらかのボランティア活動に従事しているといわれる。
なぜ、アメリカではそんなに発達しているのか、これにはいくつかの要素がある。
3キリスト教というバックボーンがあるということもある。各地域に教会があって、日曜日には、年代を超えたたくさんの人たちが集まり、そこに地域の輪ができる。
教会で牧師さんの説教を聞き、清らかな心になると、なにかいいことをしたくなる。4情報交換の場にもなり、どこそこの誰かが困っているといった情報なども教会を介してみんなに伝わる。こうして教会を中心にしたボランティアの輪が、各地域に広がっていく。
5もっと具体的な要素は、時間的なゆとりがあるということであろう。
日本人の年間労働時間は、二千時間を超えている。サービス残業や、夜間、休日などの仕事仲間とのつき合い、接待などを入れれば二千数百時間になるだろう。6それに対しアメリカでは千九百時間、ドイツでは千六百時間を切っているし、勤務時間以外は、彼らは完全に自由である。つまり、彼らには時間的余裕がたっぷりあって、そうなると人の本性として、人に良いことをしたくなってくる。
7その上、建国以来、自分たちの手で社会をつくってきたという伝統がある。また、いろいろな民族が入り交じっているから、お互いに個人を尊重しあい、協調していかないとやっていけないという状況もある。8これだけの条件が揃っているため、アメリカではあれほどボランティアが発達しているのだと思う。
それに対して、確かに日本は、キリスト教のバックボーンもないし、みんなが集まる地域の場もない、時間的余裕もない。9お先真っ暗ではないか、と考えるのも無理はないかもしれない。
しかし、宗教的な要素でいえば、熱心な信者であるかないかにかかわらず、日本人には伝統的に仏教的なフィーリングがある。習慣
|