1インフォームド・コンセントなる言葉がある。商品販売者が、無知なる顧客に対して、自己決定するのに必要な情報知識を噛み砕いて説明した上で、同意を取り付ける義務を負うということである。2そして、医療において提供されるべき情報知識は、診断の内容、複数の治療方針の利点と危険性、治療しない場合の症状の予想などであると語られている。正当な考え方だ。しかし専門家が、本当に情報知識を持っているのかと疑ってみる必要がある。
3知人が医者に余命三ヵ月かもしれないと告げられたことがある。正確には、簡単な所見から推すと、最悪の場合、末期症状の可能性があり、詳細な検査の結果として、予期される末期症状であると判明すれば、余命は三ヵ月程度である可能性があると告げられたことがある。4誤診であった。正確には、当初の所見は可能性の指摘としては論理的には正しかったが、当初の予期は確率以上の悲観性を滲ませた点において道徳的に誤りだった。
5ここで指摘したいのは、これは情報知識の提供などという、代物ではないということである。たんなる占いである。この場合、最低限提供すべき情報はこうなるだろう。所見の根拠、推測の根拠、確率計算の根拠、予後の推定の根拠である。これを示すために提供すべき情報はこうなるだろう。6過去に実際に治療した症例の解析、過去の症例と現在の症例の相違と類似性の評価の根拠、当の症例について報告する諸文献の内容の分析、症例分析や症例分類の根拠と生存期間計算の根拠などである。7ところが医者にこんな知識はない。なぜなら、誰も持っていないからである。すると、どうなるのか。
余命告知やリスク予知について、道徳的に論じたいのではない。占いは、人生の指針として役立つことはあるからだ。8人間がなってないとは思うものの、医者を非難したいわけでもない。長くは持たないと経験的に分かることはあるからだ。占いをめぐる問題は、
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