a 長文 7.1週 ni
「ドタッ、バタッ」
 という音が聞こえ、わたしは一体何が出てくるのだろうと、嬉しいうれ  よりも怖くこわ なってしまった。
 これまでで一番印象に残っているプレゼントは、七さい誕生たんじょう日のときのことだ。なにしろ、品物でも食べ物でもなく、生き物を贈らおく れたのだから。
 両親が買ってきたのは、アメリカンショートヘアーの子猫こねこだった。わたし驚かおどろ せようと直前まで隠しかく ていたようだが、ハウスの中で元気よく動き回る音が、廊下ろうかの向こうから響いひび てきていた。
 まだ小さかったわたしにとって、それは未知の存在そんざいに対する恐怖きょうふとなり、父が運んでくるころにはその不安は頂点ちょうてんに達していた。喜ぶとばかり思っていた父は、わたしが今にも泣きそうな顔になっているのを見て、困っこま てしまったと言っていた。
 ハウスから出てきた子猫こねこは、想像よりはるかに小さかった。まるで新しい住みかを確かめるかのように、まん丸のひとみで周囲をきょろきょろと見回している。よちよちとテーブルを歩き回っては、こてんと転んだりする。そのかわいらしい姿すがたを見て、わたしは「この子の面倒めんどうわたしが見てあげなきゃ」と決意した。
 「ロビン」という名前も、わたし悩みなや 悩んなや でつけたものだ。しかし、そんなロビンとの暮らしく  波乱はらんの連続で、わたしは生き物を飼うことの大変さを知った。食事やトイレのしつけはもちろんのこと、壁紙かべがみをボロボロにされたり、お風呂ふろに入れるたびに大騒ぎおおさわ になったり、脱走だっそうしたまま二日間も帰ってこず、心配で倒れたお そうになったこともある。
 さらに、抱っこだ  してやろうと手を伸ばせの  ば、するりと逃げ出しに だ てしまうのだ。いつでも手にとれるぬいぐるみとは違うちが のだと痛感つうかんさせられる。それでいて、自分がお腹 なかが空いたときには体をこすりつけて露骨ろこつ甘えあま てくるのだから、なんとも憎らしいにく   
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 学校でも飼育係をした経験があるが、その仕事は気が向いたときにエサをやったり、先生の指示があったときに水槽すいそう洗っあら たりする程度だった。
 ロビンはもうすっかり、大切な家族の一員である。だが今にして思えば、あの七さい誕生たんじょう日に両親からプレゼントされたのは、もっと大きな価値かちのあるものだったのかもしれない。
 つまり、生き物を世話することでたくさんの思い出や教訓を得る、という機会だ。こうした自分の人生に生きてくるものこそ、人間にとって本当にありがたいプレゼントなのではないかと思った。

(言葉の森長文作成委員会 ι)
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