1月ができた原因については、進化論で有名なダーウィンの息子のジョージ・ダーウィンという人が考え出した説が学会で認められていました。それによると月は地球の一部がちぎれて飛び出してできたものだが、面白いことに太平洋は月が飛び出した跡だという説を立てたのです。2ジョージ・ダーウィンという人は、たいへんあたまのいい人で、この月の成因説は、ただの思い付きというわけではなくて、推論にいろいろな根拠があげられているのです。たいへんうまい説明なので当時は反論する学者もいなくて、それが決まった学説となってしまいました。3ですから、私たちは学生の時にこういう説を教わったわけなのですが、こんな説は今ではすっかり消えてなくなってしまいました。
4地球の成因の方は、四十年程前に、ドイツのワイッゼッカーという人が、惑星は太陽から飛び出したのではなくて、昔、太陽系をおおっていたガス体から固体の粒だけが残って、それが太陽の周りをぐるぐる回っているうちに衝突し合ってだんだんに成長して、いくつかの惑星になったという説を立てました。5それで、ビュッフォンの説は消えてしまったのです。そのワイッゼッカーの学説もその後十年ほどたって、アメリカのユレーという人と、ソ連のシュミットという人が修正して、地球や木星などの惑星のもとになった粒というのは、太陽系をおおっていた粒ではなくて、太陽の引力によってつかまえられた宇宙塵、つまり隕石ということになったわけです。
6そして、月の方も、ダーウィンの説ではなく、地球のできる時に同じような現象で地球と一緒になってできたものだという説が、今日、定説となって、月は地球の兄弟だと考えられるようになったわけです。
7だが、こういった学説も月ロケットで、人間が月から石のサンプルを持ち帰ったり、ロケットの観測機が火星や土星まで飛んでいって、情報を送ってきたりすると、古い説では解釈がつかないことだらけで、また、いずれ新しい学説が誕生することになるわけです。
|