1レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」は、先にもあとにも誰にもかけなかった傑作です。心をやわらげてくれるかとおもうと、胸がきりっとなるモーツァルトの音楽は、ただすばらしいとしかいいようがなく、あれだけの音楽はやはりモーツァルトにしか作曲できなかったでしょう。2アインシュタインは空間は四次元だと、それまで誰も考えなかったことをみちびきだしました。
まったく新しいすばらしいものをうみだす「創造」の秘密はどこにあるのでしょうか。3創造はあまりにも謎めいているので「天才」にだけできることとかたづけてしまいがちです。しかし、天才だから創造できたといってしまうと、「創造」を説明したことにならないでしょう。4それでは「人間のすばらしさ」とはなにかを考えるのをなげだしてしまうことになります。
まったく新しいものといっても、人間はなにもないところから、魔法の力でそれをうみだすのではないわけです。そのもとになるものがあったのです。5ただし、それまであったままだと、創造にはならないので、それまであったものをいろいろ組みあわせて、そのできたいくつもの新しい組みあわせの中から、美しいもの、心にうったえるもの、正しく自然を説明できるものをえらびだし、世の中の人達がその価値をみとめたものが創造です。6ここで「組みあわせ」のかわりに「変化させて」といわれたほうがわかりやすいとおもう人は、そういいかえてもよいでしょう。
かんじんなのは、それまでほかの人がやらなかった組みあわせをこころみるか、こころみないかです。7それまであったものを少し変化させるか、させないかです。それをためしてみなければ、創造はおこらなかったのです。ためしに組みあわせてみたり、変化させてみるのですから、だめでもあたりまえです。ですから、だめでもともととおもって、ためしてみるしかないのです。
8第一に、創造のきっかけがあまりにも小さな、なんでもないようなことだったのと、第二に、最初のきっかけのあと、ためすのをくりかえした組みあわせや変化の努力があまり大きかったので、第三に、実はあまりにも長い時間がかかっているために、9最初のこころみと最終の成果との間があまりにへだたっているので、どうやってそれが創造されたのか、それを創造した本人にもおもいだせず
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