1モグラは食虫類に属し、からだのしくみは原始的です。歯も特に発達したものではありません。
昔の人は、畑の作物の根をかじる悪獣と思って殺しましたが、それはぬれぎぬ。真犯人は、かじるのがしょうばいのノネズミであって、モグラの貧弱な歯では、堅い植物の根などかじれるものではありません。2しかし、柔らかい虫を捕えて食べることはできるのです。
モグラは、ミミズ食いしょうばいです。だから、食事をするには土を掘り、トンネルを掘らねばなりません。でも、トンネル掘りは重労働で、とてもお腹がすきます。3だから、ミミズを食べなければなりません。それには、トンネルを掘らねばならず、とてもお腹がすいて……。だからモグラは一日に五〇匹もミミズを食べ、一日なにも食べないと死んでしまいます。4そんなことを知らないで昔の人は、モグラを捕らえてかごに入れておくと一日で死んでしまうものですから、「日光に当たると死ぬ」のだ、と誤解したのです。
そんな苦労があっても、土の中にはモグラ以外のミミズ食いの競争相手も、モグラ食いの動物も、まあいないので、モグラは「気らく」に生きていくことができます。5これが、地上で虫を食う生活だと、すばしこい鳥たちみたいな競争相手や、イタチみたいな小動物食いしょうばいのけものなどがいっぱいいて、原始的なからだのモグラはとてもやっていけないでしょう。
6このようなモグラの、きわめてモグラ的な生活を支え、まるでモグラのシンボルみたいにみえるのが、モグラの前あしです。それはシャベルそっくりで、じつに巧みに、すばやくトンネルを掘ることができます。7掘って掘って掘りまくり、ミミズを食べて食べて食べまくるモグラの生活を可能にしているのが、モグラの「シャベル」なのです。
モグラのからだは、ほかの食虫類と同じように、原始的なのですが、前あしだけ特別に発達しているのです。
8哺乳類のそれぞれの種のからだには、その種の生活の実体を象徴的に現しているしくみがそなわっています。ライオンの牙はけもの食いしょうばいのシンボルです。キリンの長い首はいかなる
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