1ミミズがある生態系に生存することで「自然の経済」にどんなかかわりをもつか、それが、イギリスの生んだ偉大な生物学者チャールズ・ダーウィン(一八〇九?一八八二)のミミズに関する着眼点だった。2彼は、邦訳『ミミズと土』で知られる『ミミズの習性に関する観察とミミズの働きを通しての有機土壌の形成』という長い表題の書物を、一八八一年に出版した。3「このように分化の低い動物で、このように重要な役割を演じてきた動物が、ミミズ以外にいようか。4もっと分化の低い動物、すなわちサンゴはサンゴ礁を形成してきたが、それはほとんど熱帯に限られてきた」と、海のサンゴと対比して、地表で絶え間なく働き続けてきたミミズに敬意を表し、ケント州ダウンの家の庭で数々の実験的観察を行っている。
5タバコには関心を示さなかったミミズが、キャベツやタマネギはすぐ穴に引き入れる様子を観察しているであろうダーウィンの姿を想像すると、思わず微笑んでしまう。6特に、一定面積内に住むミミズの数量については、一平方メートル当たり一三・三匹、一匹を三グラムとすると一平方メートル当たり三九・九グラムであることを推定している。7そして、それらのミミズがどのように糞を排出するか、一定面積当たりの糞の排出量はどのくらいか、結果として地表の土とミミズがどのようにかかわってきたか。8その一例として、一八年前に石灰をまいた畑に堀を掘った時、切り立った側面に五四メートルにわたって地表から一七・五センチメートルの深さに石灰の層があるのを観察、ミミズは平均して一年に約一センチメートルの土壌を地表に排出しているとして、ミミズの絶え間ない働きが、有機土壌の形成に大きな貢献をしてきたと述べている。9結論として、イギリスでは毎年一エーカー当たり、乾燥重量で一〇トン以上の土がミミズの体を通して排出され、その働きゆえに、古い歴史上の遺物も保存されてきたというのである。
0ところで、ダーウィンのミミズの研究にも触れた有吉佐和子の小説『複合汚染』は、一九七四年新聞に発表され、多くの人々の関心をひいたが、その中に、人間が自然をひどく傷めつけた結果、自分たちの命にひどい影響が及んでいる現状が詳しく書かれている。農村を回ってよく聞く「土が死んだ」という言葉について述べた
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