1「おや。」
ファーブルは、びっくりして立ちどまりました。小とりのすが、あったのです。2すのなかには、青空のようないろをした、うつくしいたまごが六つ、おぎょうぎよくならんでいました。
「すばらしいなあ。」
ファーブルは、むねがわくわくしました。
3すのなかから一つとりあげると、そっとポケットへいれました。うれしくてうれしくてたまりません。そのまま、池のほうへいちもくさんにかけだしました。
4けれど、それからしばらくたつとファーブルは、ふーふーいきをきって、また、すのところへはしってかえりました。5そして、さっきのたまごを、だいじそうにポケットからとりだしたのです。
「ごめんね。」
ファーブルは、たまごをそっと、もとのところへならべてやりました。
6「ごめんね。おまえは、ノビタキって名まえのとりなんだってね。そして、はたけのわるいむしをたいじして、おひゃくしょうさんをたすける、いいとりなんだってね。7ぼく、いま池のそばで、きょうかいのぼくしさんにそれをおそわったの。ちっともしらなかったんだもの。ごめんね。」
8ファーブルはそういうと、ぴょこんと、とりのすにあたまをさげるのでした。
ピーチク、ピーチク……。
9たまごのように、まっ青な大空では、ひばりがしきりにないていました。0
(二反長半編 白木茂著 「美しい話・いじんの心」より)
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