a 長文 8.3週 i
 しばさぶろうは、よろこんでくまもとの学校がっこうへはいりました。べんきょうをはじめました。
 けれども、おとうさんのいったとおり、がいこくのことばはたいへんむずかしいのでした。がいこくの先生せんせいが、がいこくのことばでおしえてくれるのです。さっぱりわかりません。いまのように、字引じびきもありません。
 しばさぶろうは、やっぱり、いやになりました。

学校がっこうをやめて、うちへかえって、ひゃくしょうをしよう。」
 先生せんせいのところへいって、「学校がっこうをやめさせてください。」といおうとしました。けれども、しばさぶろうがいうまえに、先生せんせいからさきにききました。
「しばさぶろうくん。元気げんきがありませんね。どうしたのです。」
「はい。その……。」
と、しばさぶろうは、なみだがでそうになりました。

 じっと、こらえているうちに、ふと、先生せんせいのつくえのうえのしゃしんがにつきました。ぶらんこにのっている、がいこくの子どもこ  のしゃしんです。先生せんせい子どもこ  にちがいありません。
 はっとして、しばさぶろうはいいました。
先生せんせいは、とおいがいこくから、ひとりで、日本にっぽんへきてさびしくありませんか。」
 すると、先生せんせいはにっこりとしていいました。
「そうですね。ときどき、子どもこ  のことを、ゆめにます。でも、日本にっぽんでは、すぐなおる病気びょうきにかかっても、みんな死にし ます。わたしひとりのことなどかんがえておられません。はやく日本にっぽんのみなさんに、ながいきをしていただきたいのです。」

 ああ、なんとりっぱな、先生せんせいのことばでしょう。
 しばさぶろうは、いっぺんにこころがかわりました。もううれしくてなりません。
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「そうだ。べんきょうがむずかしいなんていっていてはいけないんだ。はやくよいおいしゃさんになって、日本にっぽんのみなさんにながいきをしてもらわなければならない。」
 つよく、そう思いおも ました。

二反長半にたんおさなかばへん 白木しらきしげるちょ 「美しいうつく  はなし・いじんのこころ」より)
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