1あくる年の春に、なたねはきいろいきれいな花をさかせました。花がちって、みがなりました。
2そのみをあつめて、きんじろうはあぶらやさんへもっていきました。
「あぶらやさん。このなたねのみを、あぶらととりかえっこしてくれませんか。」
と、たのみました。3すると、あぶらやさんは、
「おお、きんじろうさんのつくったなたねのみだね。よしよし。」
と、しんせつに、あぶらととりかえてくれました。
4「こんどは、もうじぶんのあぶらだもの。おじさんだってしからないだろう。」
きんじろうは、よるのくるのが、まちどおしくてなりません。あんどんにあぶらをいれて、あかりをつけて本を読みました。
5ところが、おじさんは、やっぱりこわい顔して、
「きんじろうや。おまえはいったい、なにになるつもりじゃ。ひゃくしょうになるのに、べんきょうはいらないんだよ。あしたはあさはやくから、のらへいくのだ。はやくねなさい。」
6「はい。」
と、きんじろうは、またあかりをけさなければなりません。やっぱりきんじろうは、べんきょうができませんでした。
7「ああ、ひゃくしょうは、どうして、べんきょうをしてはいけないのだろう。そんなことはない。」
と思いました。
8けれども、おじさんにめいわくをかけてはいけません。
「そうだ。山へいく道や、たんぼへいく道で、本を読もう。」
9くわをかつぎながら、また、しばをかつぎながら、きんじろうは本を読みました。0
(二反長半編 白木茂著 「美しい話・いじんの心」より)
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