長文が二つある場合、音読の練習はどちらか一つで可。
1「これってどういうこと? 教えてよ。」
私の家では、家族どうしの会話がとても多い。テレビや新聞を見ていて、気になることがあると、みんな遠慮なく口に出す。名前の分からない芸能人がいれば父は私に聞いてくるし、可愛い動物が映れば母は大喜びでみんなを呼ぶ。2中学生の兄はすぐに、聞いてもいないうんちくを言いたがる。
そういう私も、自分が好きな本や映画の話になると、「これはこういうあらすじで、こんな登場人物がいてね……」と解説を始めてしまうのだから、始末に終えない。
3ああでもないこうでもないと話しているうちに、気がついたら番組そのものが終わっていた、ということも少なくない。自分の考えをしゃべって、家族の意見を聞いて、納得することが楽しいのだ。
ある日、私が帰宅すると、父と兄が何事か言い合う声が聞こえてきた。4ふだんのんびりして頼りなさそうな父と、ダジャレばかり言っている兄。そんな二人がこんなに熱くなるのは珍しいことだ。
まさか喧嘩かと私は身を固くしたが、よくよく聞いてみると、どうやら二人とも同じことについて怒っていて、その不満を述べ合っているらしい。5私はひとまず安心して、何があったのかと聞いてみた。
すると兄は「はやぶさ」のことだと教えてくれた。小惑星探査機「はやぶさ」が、長い宇宙の旅を終えて地球に帰ってくる。それも、さまざまなトラブルを乗り越えて、奇跡的に。6私はそんなものが存在していたことすら知らなかった。
父と兄は、その世紀の瞬間がテレビ中継されないことに憤慨していたようだ。とはいえ、今はちょうどサッカーのワールドカップが始まったところだ。四年に一度のイベントを優先する方が当たり前ではないかと、私には思えた。
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