a 長文 3.3週 e
 みよ子  こちゃんは、このあいだから、こっそりおもいつづけていることがあります。
――いっちゃおうかな……と、よるになるとおもいます。でも、ちょっとはずかしくって、いえないのです。けれど、きょうはほしのとくべつにきれいなよるでした。そこで、みよ子  こちゃんは、とうとう、おねだりしたのです。
――ね、おとうさん、おねがい。
 ほほう……と、おとうさんは、めずらしそうにふりむきました。
――あれ、とって。
 みよ子  こちゃんは、そらにたくさんあるほしをゆびさしました。
 あははは。おとうさんはわらって、
――あれは、だめ、ほしだもの。
 みよ子  こちゃんのかおはクシャンとゆがんで、べそをかきました。どうしてほしならだめなのかしら。
 おにいちゃんなんか、あんな高いたか ところをとんでるトンボでも、ひょいとつかまえてくるのに……。
――あれはね、とってもとおいところにあってとても大きいおお  んだ。
 けれどもみよ子  こちゃんには、おとうさんのせつめいなぞみみにはいりません。おもいつづけていたことを、やっといったのに、あははは、とわらわれちゃったんですからね。
 みよ子  こちゃんはだまっていえをでていって、うしろのおかにのぼりました。そらほしに、いっそうちかくなったのするところです。そして、そこにしゃがんでなきはじめました。
 エーンエンエンエン
 大きなおお  なみだが、ポタンポタンとおっこちて、つちにすいこまれてゆきます。すると、そのへんでへんなおとがするのです。
 コボン、コボ、コボ、ポコン
 みよ子  こちゃんはきみがわるくなって、なきやみました。そしてたちあがったとたん、ポウン……と、足もとあし  つちがはねのけられて、みょうないきものがかおをだしました。
――えへへ、ぼく、モグラだよ。
 モグラなんて、しりません。
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 けれどモグラのほうは、いっこうにへいきでつづけました。
――みよ子  こちゃんが、あんまりなみだをおとすんで、ぼくのいえのまえのみちね、そこの天井てんじょうがゆるんじまうんでね。
――あら、ごめんなさい。
――みよ子  こちゃんはあやまりました。
――だって、わたし、そんなところにおうちやみちがあるなんて、気がつかき   なかったんだもの。
 するとモグラは、みじかいをふって、いやいや、べつにあやまってもらわないでも……。そこでふたりは、はなしはじめました。そしてみよ子  こちゃんがほしのことをいうと、モグラは、なあんだ、といったかおつきでいうのです。
――ようがす。
 それからくるりとまわれみぎ、五ふんもしないうちに、またあなからかおをだすと、
――これですよ、かけらしかとれませんでしたがね。
 ひょいとさしだしたのは、つちのかたまりです。こんなつちなんて、と、みよ子  こちゃんがうけとらないでいると、モグラはいうのです。
――だってこの地球ちきゅうも、ほしの一つなんですよ。そらのむこうからみれば、あおく光っひか て、くるくるまわってるんです。
 へええ、そうなの、と、みよ子  こちゃんはおもいました。

「ぽけっとにいっぱい」『ほしをもらった』より(今江いまえ 祥智よしとも)フォア文庫ぶんこ
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