1ところがあくる朝、かあさんゾウが目をさまして、おどろきました。バオバブがいなくて、そのかわり、ぜんぜんしらないゾウが、よこにねむっているのです。かあさんゾウは、あわててとうさんゾウをおこしました。
2目をこすりこすり、そのゾウをみてとうさんゾウもおおあわて。それにしても、なんというあつかましいゾウでしょう!
いや、それよりも、バオバブは、いったいどこへいったのでしょう。
3ふたりはますますあわてて、そのゾウのおしりを、おもいきりけっとばしてやりました。もしかすると、その下じきになっているかもしれないではありませんか。かわいそうなバオバブちゃん!
4けれど、そのゾウはのんびりと目をひらき、
――いたいなあ、とうさん……
というのです。
――とうさんだって!
とうさんゾウは、あきれてしまいました。こんな大きなゾウに、とうさんなんてよばれるおぼえはない。5すると、かあさんゾウが、とんきょうな声をあげました。
――まああ、とうさん、それはバオバブぼうやですよ!
――バオバブぼうやだって……。
どうみても、ぼうやなんてからだつきではないのです。とうさんゾウより大きいくらいなのですから。
6――ほら、あの目の下のなきぼくろ……
さすがはかあさんです。ちゃんと、むすこのとくちょうをおぼえていました。
――そうですよ、ぼく、バオバブですよ。 とうさんたら、じぶんのむすこをみわすれるなんて、ひどいなあ。
7そんなことをいったって、この大きなゾウを、どうしてきのうのかわいいバオバブぼうやだとおもえるでしょう。とうさんゾウは、じぶんの耳をひっぱってみました。
――まだあんなことをやってる。ゆめじゃありませんよォ。
8バオバブが、ふふくそうにいいました。
――ぼくだといったら、ぼくなんです。ぼくは、大きくなるのがはやいだけなんですよ。
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