a 長文 6.3週 1a
 近代以降の医療いりょうは西洋医学が中心で、西洋医学は分析ぶんせき医学になって、傷んだ箇所かしょを物理的に治そうとしてきました。歯が悪ければ悪い箇所かしょ削っけず てつめものをして、それが最良の治療ちりょうということです。
 胃が悪ければ胃薬を差し出す。それで胃が治れば医学の勝利なのです。歯がなぜ悪くなったのか、悪くさせないためにはどうしたらいいか、ということには非常に不熱心になってしまいました。ガンのお医者さんはガンを退治することしか考えない。そのための手術が体のどこにどんな悪影響あくえいきょう与えるあた  かは知っていても無視する。自分の担当部位が治れば「おれの勝ち」みたいな一種のたくみ名争いが起こっているのです。
 もし虫歯の予防がうまくいって「痛い、痛い」と言う人が少なくなれば、歯医者さんはやっていけなくなる。だから極端きょくたんなことを申せば「治す技術はしっかりありますから、虫歯になっても大丈夫だいじょうぶですよ」という感じでやってきたわけです。
 歯医者に限らず医療いりょうはみんな同じ発想でやっています。その結果、病気の本質が見えなくなってしまった。そのことを端的たんてきに示しているのが最近言われ始めた「胃ガンピロリきん説」ではなかろうかと思うのです。
 胃ガンの人を調べると、胃の中にヘリコバクスター・ピロリというきんがいる。このきんが胃ガンを作る元凶げんきょうだとマスコミなどでも報じられていますが、こういう結論のもって行き方が現代の特徴とくちょうなのです。
 私に言わせれば、なるほど胃ガンの人の胃の中にはピロリきんはいるだろう。しかしピロリきんが胃ガンを作った確証はない。胃ガンになったからピロリきんが住むようになったと考えることだってできると思います。因果関係は全然わかっていないのですから。それにもかかわらず「ピロリ、ピロリ」と騒いさわ でいる。波動的な考え方をしますと、胃ガンになるからピロリきんというものがたぶん出てくるのであろうと、そういうふうに推定できます。原因と結果を取り違えと ちが ているのです。結果と見えていることは実は原因であり、原因と思われることは結果である。そういう見方も必要と思います。
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 ガンについては発ガン物質がどうの、やれ煙草たばこがいけない、食品添加てんか物の中には発ガン物質がいっぱい入っていると騒いさわ でいますが、ガンの原因は全然別のところにあって、いま言われているような物質は、全然関係ないとは言いませんが、その関与かんよの仕方は現在言われているのとずいぶん違っちが ているように思われます。
 たとえば、O−157という大腸菌だいちょうきんが各地で食中毒を起こしました。そうすると「手をきれいに洗いなさい」「よく熱を通して食べなさい」と食品衛生の専門家がテレビなどで指導をしています。これは一見正しいようでどこか違っちが ている。注目しなければいけないのは、食中毒にかかった子供ではなく、同じものを食べて平気だった子供のほうです。
 同じ物を食べて中毒を起こす子供と起こさない子供がいた。起こさなかった子供はそのきんが口から入らなかったのか。そうではないでしょう。食べたけれども抵抗ていこう力があって中毒にならなかったのです。こちらに着目すれば新しい視点が開けます。
 (「蘇生そせい力」中根しげる ビジネス社より)
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