このような社会的な傾向が三〇年先にどのようになっているかを現在時点で予測することは困難だし、またその結論を保証することはできないが、次のような手法は可能だし、また企業として将来の目標を立てるために使える。それにはまず、
(1)三〇年先の望ましい社会または個人の姿を設定する。
(2)それに到達する上でのボトルネックに何があるかを洗い出す。
(3)そのボトルネックを解決するには行政、企業、個人はどのようなことをすればよいかをリストアップする。
(4)そのための技術、製品、流通、などとして何が考えられるか。という方法論である。
三〇年先へのボトルネックといってもピンと来ないかもしれないが、いくつかの例を示せば次々と見えてくるはずだ。そのひとつはもちろん高齢化社会への移行から来る数々の問題だ。問題があるということは、それを解決するための方法が見つかればビジネスとして成立するということである。
すでに日本だけではなく高齢化が進む工業先進国の間では、そのための技術開発が次々と進められている。日本でも一般住宅用のエレべーターが開発されて、新しい市場が生まれた。また二四時間沸き放しの風呂も若い人からの要求ではなく、ある年齢層以上の市場を開拓した。
ここで日本のボトルネックの例としてまず高齢化の話を取り上げたが、日本の経済という立場からすると、最も大きな課題は世界の中で日本の産業が三〇年先でも優位性を保つことができるかどうかということである。もっとわかりやすくいえば、どの種類の産業で稼ぐことができるかということだ。
産業の競争力を示す一般的な指標として使われるのは生産性である。つまり生産のために投入する人、設備、資金、原材料、時間などが単位当たりどれだけの付加価値を産出できるかという数字である。これらが低いレベルにあればコストが高いということに相当するのだから稼ぎが少なくなり、それだけひ弱な経済ということになる。
日本のボトルネックとして現在誰でもいうのが日本の物価高だが、その原因は簡単だ。
|