地球が抱えるこれからの課題というと、一般的に誰の頭にも浮かぶのが地球規模で進む人口の爆発的増加と、これに対応できるかどうかの食糧生産の可能性、さらにはエネルギー消費の増大、人々の生活の高度化による廃棄物の増大といったことになるが、それが日本国内ということになると様子がいささか変わってくる。出生率の低下から日本の人口についてはむしろその減少ということが問題になるので、地球規模で語られる話とは様子が変わってくる。エネルギーにしても、日本で実証炉が動くことになっている核融合がモノになれば事態は一変する。
そこでここでは日本を中心とした話題をまず取り上げ、その上で地球規模で展開しつつある各種の問題と、これに対応する技術の動きという順序で検討していくことにする。
まず人が生きていくには食糧がいるが、日本の自然的条件としては、国内での自給自足は可能である。それには現在までの状況はすべて無視して、食糧生産の原点から考えてみると全く別な姿が見えてくる。
農業の場合まず必要なのはもちろん土地だが、日本列島の土質は幸いなことに農業には最も向いている。スペインの上を飛ぶと、どこまで行っても赤茶けた埃(ほこり)だらけの粘土質の土地が続いて、これではオリーブかせいぜい葡萄くらいしかできないことがすぐわかる。ところが日本列島は飛行機で飛ぶと南から北まで緑滴る島である。
次は水だが、周囲が海に囲まれているおかげで欧州の平均値の二倍から三倍は雨が降る。
最後に太陽だが、亜熱帯のおかげで欧州とは比べものにならないくらいに日照時間は長い。つまり農業の原点である土地と水と太陽がこれだけそろっている。それでいながら日本の農業がとやかくいわれるとしたら、明らかに人災であって天災では絶対にない。その証拠はいくらでもある。
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