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 西洋せいようには「トマトが赤くなると医者いしゃが青くなる」ということわざがあります。真っ赤ま か実っみの たトマトを食べると、お医者いしゃさんが困るこま ほど、だれも病気びょうきにならない、という意味いみです。これは少々大げさな言い方だとしても、トマトの赤さのもと、リコピンには病気びょうき予防よぼうする働きはたら があります。また、トマトには、ビタミンCも多くふくまれています。
 このことわざとそっくりなもので、日本には「かきが赤く色づくと医者いしゃの顔が青くなる」という言葉ことばがあります。かきにはビタミンやミネラルが豊富ほうふ含まふく れています。また、かき葉っぱは  しぶにも多くの栄養素えいようそ備わっそな  ています。おもしろいのはカキのヘタの部分ぶぶんで、しゃっくりを止める働きはたら があるということです。
 イギリスには、「一日にひとつのリンゴは医者いしゃを遠ざける」ということわざがあります。リンゴには病気びょうき予防よぼうしたり、回復かいふく役立っやくだ たりする作用があるからです。「サンマが出ると医者いしゃ引っ込むひ こ 」などというのもあります。このように身近みぢか食べ物た ものがことわざになっているものは少なくありません。
「秋ナスはよめに食わすな」ということわざがあります。これはおいしい秋ナスを、おしゅうとめさんがお嫁さんよめ  にわざと食べさせない、と考える人もいます。しかし実はじつ 、秋にとれるナスは体を冷やすひ  ので、これから子どもを生み育てるそだ  嫁さんよめ  には食べさせすぎないように、という心遣いこころづか がこめられているとも言われています。さて本当はどちらでしょうか。
 このほかにも、ヨーロッパでは、「レタスはこいほのおをしずめる」という言い方があります。レタスの切り口から出てくる白いしるには、精神せいしん安定あんていさせたり、眠気ねむけをさそったりする働きはたら があるのを、しゃれた言い回しで表しあらわ ているのです。
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 変わっか  たところでは、「ミョウガを食べると物忘れものわす をする」というのもあります。これはつぎのような話から伝わっつた  たとされています。むかしお釈迦様 しゃかさまの弟子で物忘れものわす 激しいはげ  人がいました。その人は自分の名前も覚えおぼ られなかったので、お釈迦様 しゃかさま名札なふだを首にかけてあげました。やがて、その人が亡くなっな   たあと、おはかのまわりに見知らぬ植物しょくぶつが生えました。それが「茗荷みょうが」と名づけられた、というお話です。しかし、ミョウガを食べると物忘れものわす をするということはありません。逆にぎゃく ミョウガの香りかお には集中しゅうちゅう力を高める効果こうかがあるそうです。
 「大豆だいずはたけの肉」「アボカドは森のバター」「カキは海のミルク」などなど、簡潔かんけつなたとえにされているものも数多くあります。どれも実にじつ うまく食べ物た もの効用こうよう表しあらわ ています。

 言葉ことばの森ちょう作成さくせい委員いいん会 α
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