a 長文 12.3週 00u
やまんばのにしき3
 そこで、いろりのをどんどんもやし、でっかいなべにくまのすまし汁   じるこさえ、もちいれて食っく た。まず、そのうまいこと、ばんばは、腹いっぱいはら    になったと。
「やれ、ごちそうだったこと。そんではおら、これでむらへかえらしてもらうから。」
 ばんばがそういうと、やまんばは、
「なに、そんなにいそぐことはねえ。ここにはてつだいもいねし、二十一にちほどてつだっていってくれや。」
といった。
 しかたなくあきらめて、あかざばんばは、みずくんだり、やまんばのあしもんだり、きょう食わく れるか、あすこそ食わく れるかとおもいながら、はやいもので二十一にちたってしまった。
 そこで、ばんばはおそるおそる、
いえでもしんぱいしてるべから、かえりたいども。」
というと、
「なんとやっかいかけたな。いえのつごうもあるべから、かえってくれ。なんのれいもできんが、にしきを一ぴきくれてやる。これは、なんぼつかっても、つぎのには、またもとどおりになっている、ふしぎなにしきだ。むらひとたちには、なんにもねえどもだれもかぜひとつひかねよに、まめでくらすよに、おれのほうでをつけてやるでえ。」
やまんばは、そういうと、がらに、
「がら、がら、ばんばをおぶっていってやれ。」
といいつけた。
「なに、おら、あるいてかえるから。とんでもねえ、おぶさるなんて。」
 ばんばは、あわててをふったが、がらはすっとんできて、ばんばを、ひょいとせなかへのせ、
え、ふさいでれ。」
といったかとおもうと、みみのあたりにすうすうかぜがふいていく。
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とんと、地面じめんにおろされて、をあけてみれば、そこはなんと、ばんばのいえのまえであった。
「がら、がら、よってやすんでいけ。」
といったときには、もう、がらのすがたはなかった。
 ばんばがいえなかへはいろうとすると、
 なんまんだあ なんまんだあ
 なんまんだあ なんまんだあ
と、おきょうをあげるこえがする。それにまじって、おうえ、おうえ泣くな こえもして、どうやら、だれかが死んし だようだ。ばんばはたまげて、
「だれか死んし だかやえ。」
とはいっていった。すると、
「ひえ、ゆうれいだ。たましいがかえってきたど。」
と、あつまっていたむらじゅうのもんが、えむいたり、ひっくりかえったり、でかさわぎになった。
「ゆうれいなものか。おらだ、あかざばんばがいまもどったど。」
「ほんとか、ほんとにばんばは、生きい ているだか。」
 むらしゅうは、泣いな てよろこんだと。
 そこで、ばんばは、
「さあさあ、やまんばのにしきをやるべ。」
と、むらじゅうにやまんばのにしきを、きってはわけ、きってはわけ、じぶんの手もとて  には、ほんのすこししかのこさなかったと。しかし、つぎのになってみると、ばんばのにのこったにしきは、もとどおりになっていたそうな。
 むらひとたちは、みたこともないにしきを、ふくろにしてさげたり、はんてんにしたり、おおよろこびでいえたからにしたと。
 そして、それからというもの、むらひとたちは、かぜもひかず、みんな、らくにくらしたということだ。
 とっぴんぱらりのぷう
 
日本にっぽんむかし話   ばなし1(松谷まつたにみよ子  こ講談社こうだんしゃあおとり文庫ぶんこ
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