山んばのにしき3
1そこで、いろりの火をどんどんもやし、でっかいなべにくまのすまし汁こさえ、もちいれて食った。まず、そのうまいこと、ばんばは、腹いっぱいになったと。
2「やれ、ごちそうだったこと。そんではおら、これで村へかえらしてもらうから。」
ばんばがそういうと、山んばは、
「なに、そんなにいそぐことはねえ。ここにはてつだいもいねし、二十一日ほどてつだっていってくれや。」
といった。
3しかたなくあきらめて、あかざばんばは、水くんだり、山んばの足もんだり、きょう食われるか、あすこそ食われるかとおもいながら、はやいもので二十一日たってしまった。
4そこで、ばんばはおそるおそる、
「家でもしんぱいしてるべから、かえりたいども。」
というと、
「なんとやっかいかけたな。家のつごうもあるべから、かえってくれ。なんの礼もできんが、にしきを一ぴきくれてやる。5これは、なんぼつかっても、つぎの日には、またもとどおりになっている、ふしぎなにしきだ。村の人たちには、なんにもねえどもだれもかぜひとつひかねよに、まめでくらすよに、おれのほうで気をつけてやるでえ。」
6山んばは、そういうと、がらに、
「がら、がら、ばんばをおぶっていってやれ。」
といいつけた。
「なに、おら、あるいてかえるから。とんでもねえ、おぶさるなんて。」
7ばんばは、あわてて手をふったが、がらはすっとんできて、ばんばを、ひょいとせなかへのせ、
「目え、ふさいでれ。」
といったかとおもうと、耳のあたりにすうすう風がふいていく。
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