a 長文 9.3週 00i
「カー! カー! カー!」
 さむい、さむい、正月しょうがつあさ
 ひとりのおぼうさんが、からすの鳴きな まねをしながら京都きょうとまち歩きある まわっています。
「なんや、へんなぼうさんやなあ。」
「やや! このぼんさん、しゃれこうべもってるえ!」
 子どもこ  たちがさわいでもへいっちゃら。
「カー! カー! なむあみだぶつう……。」
 おぼうさんは、一けんのだいきないえまえでとまると、もっていたしゃれこうべをふりふりおきょうをとなえだしたのです。
 もんがあいて、主人しゅじんてきました。
帰りかえ や、このくそぼんず! めでたい正月しょうがつにえんぎでもないわ!」
 すると、おぼうさんはこういったのです。
「まあ、よくごらん。しゃれこうべは、っぱなし。こんなにめでたいものもない。それに、ひとはみな、いつかこうなるのだ。」
 主人しゅじんは、あわててなかにひっこむと、
「いや、負けま ましたわ、なんまんだあ。」
と、おぼうさんがかけているふくろのなかにひとつかみのおこめをいれてくれました。
 つぎのいえでも、そのつぎのいえでも、おぼうさんは、同じおな ようにしゃれこうべを見せみ 、おきょうをあげて、おこめをもらいました。
 おぼうさんのふくろは、おこめでいっぱいになりました。おぼうさんは、それをもってまずしい人々ひとびとのところへいきました。そして、
「さあさあ、みんなでおかゆをたいて、いただこう。」
といったのです。
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 おぼうさんのまえは、「一休いっきゅう」。
「ねえ。どうして『一休いっきゅう』っていうの。」
「わしはな、一休みひとやす しながら生きるい  のがすきなんじゃ。だから『一休いっきゅう』さ。のんびり生きるい  のは、いいことだよ。」
といったそうです。
 それはいまから六ひゃくねんほどむかし室町むろまち時代じだいのことでした。

岡田おかだ好恵よしえ
こころをそだてるはじめての伝記でんき101にん」(講談社こうだんしゃ
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