1「カー! カー! カー!」
さむい、さむい、正月の朝。
ひとりのおぼうさんが、からすの鳴きまねをしながら京都の町を歩きまわっています。
2「なんや、へんなぼうさんやなあ。」
「やや! このぼんさん、しゃれこうべもってるえ!」
子どもたちがさわいでもへいっちゃら。
「カー! カー! なむあみだぶつう……。」
3おぼうさんは、一けんの大きな家の前でとまると、もっていたしゃれこうべをふりふりおきょうをとなえだしたのです。
門があいて、主人が出てきました。
「帰りや、このくそぼんず! めでたい正月にえんぎでもないわ!」
4すると、おぼうさんはこういったのです。
「まあ、よくごらん。しゃれこうべは、目が出っぱなし。こんなにめでたいものもない。それに、人はみな、いつかこうなるのだ。」
5主人は、あわててなかにひっこむと、
「いや、負けましたわ、なんまんだあ。」
と、おぼうさんがかけているふくろのなかにひとつかみのお米をいれてくれました。
6つぎの家でも、そのつぎの家でも、おぼうさんは、同じようにしゃれこうべを見せ、おきょうをあげて、お米をもらいました。
おぼうさんのふくろは、お米でいっぱいになりました。7おぼうさんは、それをもってまずしい人々のところへいきました。そして、
「さあさあ、みんなでおかゆをたいて、いただこう。」
といったのです。
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