課題集 ツゲ3 の山
苗
絵
林
丘
○自由な題名
/池
池新
◎はじめてできたこと
/池
池新
★お父(母)さんの仕事、秋を見つけたこと
/池
池新
○巣穴の中が、
/池
池新
巣穴の中が、どのようになっているのか知りたくて、調査したことがあります。帰る巣穴がなくなってしまって、かわいそうだったのですが、巣穴の中に石こうを流しこんで形を調べました。
巣穴は単純な形で、途中で枝分かれしているようなことはありません。
巣穴の出入り口は一つで、その部分がいちばん細くて、断面が丸くなっています。出入り口の部分が、とくに波の影響をうけやすいわけですから、出入り口は小さいほうがこわれにくいのでしょう。
巣穴のまん中あたりが、少し太くなって、ゆるやかにまがっています。満ち潮のとき、カニが休むのは、この場所です。
オスとメスで、巣穴の形にちがいはありませんが、カニの大きさによって、巣穴の深さがちがいます。浅くて十センチ、深くて二十センチくらいなのですが、深さが五十センチをこえる例もあります。もっとも深い記録は、九十五センチです。
シオマネキは、横向きに巣穴に入っているので、もちろん、下側のあしを使って穴を深くほってゆきます。少しほると、砂と泥をあしで丸めて、出口までかかえあげ、そして、巣穴の外にすてます。
カニの甲羅の幅は二センチくらいのものなので、五十センチをこえる深さまで穴をほるのは、さぞかし、たいへんな重労働だろうと思います。
カニの大きさと巣穴の深さを、単純に人間におきかえて考えると、人間が自分の手で深さ四十メートルくらいの穴をほるのと同じですから、確かに重労働だといえます。
シオマネキは、昼間に活動するカニです。夜は目がみえないのかどうかわかりませんが、とにかく、夜間に潮が引いても、巣穴から出てきません。昼間は、潮が引いて、日がさしていれば、ほとんどのカニが出てきます。∵
たまには、これらの条件がすべてそろっているのに、なぜだか、出てこないカニもいるのですが……。潮の引き方、気温、日ざしなどは時間によって微妙に変わるので、干潟に出ているかにの数は、いつもと同じというわけではありません。晴れていたのに、急にくもってきたり、雨がぽつぽつ降ってきたりすると、巣穴に入ってしまうカニが、だんだん多くなってゆきます。
初めからざあざあ降りの雨なら、潮が引いていても、けっして出てきません。シオマネキは、潮が引いている間に活動するとはいっても、やはり、海のカニなので、雨はきらいなのです。
満ち潮の時間が近づくと、どのカニも、皆、巣穴に入ってゆきます。
巣穴に入るときは、入り口近くの砂と泥をあしでかき集めて、くるくると器用に丸め、「砂だんご」をつくります。そして、体を先に巣穴に入れてから、この砂だんごでふたをします。
砂だんごが小さすぎれば、ふたにはなりませんし、大きすぎれば、もり上がってしまいます。でも、カニは自分の巣穴の大きさをよく知っているらしく、どのカニも、巣穴の大きさと砂だんごが、いつもぴったり合います。
シオマネキが、巣穴にふたをする作業には、たっぷり時間がかかりそうに思えるかもしれませんが、どのカニも、わずか数秒間でたくみにふたをして、地中にすがたを消してしまいます。
カニが巣穴にふたをしたあとは、近くでみていても、もうどこが巣穴の位置だったのか、すっかりわからなくなってしまうのには、感心させられます。
(武田正倫「干潟のカニ・シオマネキ おおきなはさみのなぞ」)