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課題集 シオン3 の山

○自由な題名 / 池新
○小さいころから大切にしているもの / 池新

○おかしかったこと / 池新
○アリの結婚式 / 池新
 初夏のある日の午後、巣穴のまわりに多数のアリが忙しそうに群がっています。クロオオアリです。みんな大変興奮しています。よく見ると、その中に羽のある大きなアリがまじっています。さらに気をつけてみると、この羽のあるアリには大小二つの型があるようです。やがて羽のあるアリは、次々に大空へ飛びたっていきます。大多数のアリには羽がないのに、大空へ飛びたった羽のあるアリたちはいったい何者なのでしょうか。
 この羽のあるアリははねアリとよばれ、大きいほうがメス、小さいほうがオスです。そして、大空へ飛びたっていったのは、メスの羽アリにとってはおむこさん探し、オスの羽アリはおよめさん探しの出発なのです。このような羽アリの旅を結婚飛行と言います。
 この結婚飛行の時期は、アリの種類によって決まっていて、そのときには同じ地域のたくさんの巣からいっせいに羽アリが飛び出していきます。たとえば日本の中部では、クロナガアリが四月下旬、クロヤマアリが五月中旬、キイロシリアゲアリが九月です。
 大空に飛び出した羽アリたちはオスメス入りみだれて飛びつづけます。やがて、メスアリは、地上におりて自分で自分の羽を落とします。これは母親になる準備です。そして、巣となる場所を求めて歩きまわり、適当な場所が見つかると、そこに産卵のための穴を掘ります。やがて巣が完成すると入り口を内側からしっかり閉めて中にこもります。
 オスアリたちも地上にまいおりますが、結婚飛行でつかれ、じきに鳥や虫のエサとなってしまいます。
 巣の中にこもったメスは、やがて毎日ほぼ一個ずつ卵を産みます。卵はメスアリにきかかえられるように大事に守られ、やがて幼虫になります。幼虫は、母アリから口うつしでえさをもらって大きくなり、何日かたつと、おしりの先から絹を出して、自分の体をつつむようにしてまゆをつくります。そして、まゆの中で脱皮∵をしてさなぎになります。さなぎは、もうアリの形をしています。
 やがて、まゆからアリがかえります。このアリは働きアリといい、羽はありません。体は小さく母アリの半分以下ですが、元気よく働くようになります。働きアリが十ぴきくらいになると、母アリは働きアリからエサをもらうようになり、それ以降生まれた卵は、働きアリに世話をされるようになります。
 母アリは、働きアリが巣の外に出て取ってきたえさを食べて、どんどん卵を産んでいきます。ふつう、卵をうむのは集団の中で母アリ一匹いっぴきだけなので、これを女王アリとよんでいます。女王アリの寿命は長く、条件がよければ十年以上も生きるといわれています。
 巣がまだ小さいうちに生まれた子どもたちは、大きくなってからも働きアリにしかなりませんが、ある程度以上巣が大きくなると、羽アリが適当な季節に生まれるようになり、アリの結婚飛行が再びはじまるのです。

「働きアリのほかには、どんなアリがいるんですか。」
「壁に耳アリとか、障子に目アリとか。」
「それは、アリの仲間ではアリません。」

 言葉の森長文ちょうぶん作成委員会(Κ)