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課題集 セリ3 の山

○自由な題名 / 池新
○この一年、新しい学年 / 池新


○ヘモグロビンと葉緑素 / 池新
 ホラー映画や推理ドラマでは、「したたる真っ赤な血」の映像に、怖い場面が想像されて、ドキドキしたり、時には「きゃーっ」と叫んでチャンネルを変えてしまうことがあります。赤いペンキがたれていても、私たちは血を連想してしまいます。では、血の色はなぜ赤いのでしょうか。
 じつは、血の色は必ずしも赤とは限らないのです。ふだんあまり血まで見ることはありませんが、エビやタコ、イカなどは青い血を持っています。人間や多くの動物の血の色は確かに赤ですが、この赤い色は、意外なものに関係があります。それは、鉄です。では、どうして、鉄と血が関係あるのでしょうか。
 人間の血液は、赤血球という赤い色のつぶと血漿という黄色の液体でできています。赤血球は、丸いお団子の真ん中をへこませてつぶしたような形をしていて、大きさは髪の毛の太さの十分の一ほどです。この赤血球が、私たちの体の中で酸素を運ぶ大切な役目を果たしているのです。
 赤血球の中には、ヘモグロビンという赤い色素がいっぱいに詰まっています。これが、血の赤い色の正体です。ヘモグロビンは、ヘムとグロビンが合体してできています。グロビンが透明なのに対して、ヘムは赤い色をしています。そして、このヘムの真ん中に鉄が含まれているためにヘムが赤い色をしているのです。
 ちなみに、青い血のエビやタコでは、鉄は含まれていません。エビやタコの血の中には、鉄の代わりに銅が含まれています。銅というのは、十円玉を作っている金属です。銅は、そのままではやや赤い色をしていますが、血の中では青い色の素になるのです。
 細胞が活動するには酸素が必要で、活動するといらない二酸化炭素ができます。ヘモグロビンと血液は、このいらない二酸化炭素を代わりに受け取り、また肺へともどっていきます。そ∵して、また肺で、二酸化炭素と酸素を交換して運んでくるのです。
 ところで、この働き者のヘモグロビンですが、意外なことに、とても似たものが植物の中にあるのです。それは、植物の葉の中にある葉緑素です。葉緑素は、葉が緑色みどりいろに見えている素になっているものですが、こちらもとても働き者です。太陽の光を浴びると、葉緑素は、私たちが捨てている二酸化炭素と水を使って、デンプンという養分と酸素を作り出します。地球上に酸素がいっぱいあるのは、植物の葉緑素のおかげなのです。
 そして、不思議なことに、この葉緑素と私たちの血の中にあるヘモグロビンのヘムは、構造がとてもよく似ているのです。葉緑素は、ヘムの中の鉄の代わりに、真ん中にマグネシウムという金属を持っています。ヘモグロビンと葉緑素は、どちらも動物と植物が生きていくのに大切なものですが、それがこのように似ているということは、もしかすると動物も植物も、みんな仲間なのだということなのかもしれません。
 私たちが赤い血の代わりに、葉緑素でも生きていけるようになったら、太陽の光に当たるだけで、食事をしなくても済むようになるでしょう。そうしたら、太陽でお腹いっぱい、めでたいようなどということになるかもしれません。しかし、いろいろなおいしい料理を食べる楽しみはなくなってしまいます。また、ホラー映画で血がたれていても、
「だあれ、こんなところに青汁こぼしたの。」
の一言で終わってしまいます。ドラキュラも、緑色みどりいろの液体を飲み干して、こう言うようになるかもしれません。
「まずい! もう一杯。」 言葉の森長文ちょうぶん作成委員会(τ)