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課題集 セリ3 の山

○自由な題名 / 池新
○種まき / 池新
★春を見つけた、おどろいたこと / 池新

○音のしくみ / 池新
 暗い夜道を一人で歩いているとき、後ろから誰かが近づいてきたら、何となく気配でわかるものです。何も見えないのに、後ろの様子がわかるのはなぜでしょう。このとき感じる気配というのは、実は音なのです。真っ暗闇の中では、目よりも耳が活躍して、音によって周りの様子を感じ取っています。
 目隠しをしていても、どの方向から音がするのか私たちは知ることができます。それは、耳が二つあるおかげです。右耳と左耳で聞いている音の大きさの違いから、音のする場所を判断することができるのです。これをうまく利用したのが、ステレオスピーカーです。目をつぶってステレオから流れる音楽を聴いていると、自分の前でオーケストラが演奏しているような感じがします。一つ一つの楽器の左右の音の強さを、位置に応じて変えているため、いろいろな位置から音が聞こえてくるように思えるのです。たとえば、右のスピーカーと左のスピーカーから同じ強さでピアノの音が聞こえれば、ピアノは舞台の中央にあるように感じます。また、左のスピーカーからバイオリンの音が強く聞こえれば、左のほうにバイオリニストがいて演奏しているように感じるのです。
 音の正体は、空気の振動です。空気の濃い部分と薄い部分が、リズミカルにくり返されると、それが音になります。たいこを叩くと、たいこの皮が押されて、反対側の空気を押しつぶします。すると、その部分の空気が濃くなります。次に、押された皮は反動で元にもどります。このときに空気をひきもどし、その部分の空気は薄くなります。皮が元にもどる力で、この動きがくり返されると、空気の濃い部分と薄い部分がリズミカルに現れます。たいこを叩くと音が鳴るのは、このためです。
 バイオリンやギターなどのげん楽器も、たいこと同じ原理で音を出します。ただ、げんは細いので、たいこのように周りの空気をたくさんふるわせることができません。そこで、げんの振動を板に∵伝えて、板全体がふるえるように工夫されています。そうすることで、細いげんを使っていても大きな音を出すことができるのです。
 空気が振動すれば、それはすべて音になって聞こえるのでしょうか。空気の濃い薄いがくり返される速さの単位を、ヘルツといいます。たとえば、一秒間に百回くり返されれば、百ヘルツです。このヘルツが大きければ大きいほど、音は高くなります。人間が聞き取れる音は、二十ヘルツから二万ヘルツの間で、それよりも高い音や低い音は聞こえません。ところが、こうもりはもっと高い音を聞き取ることができます。昔は、こうもりには声がないと思われていましたが、調査の結果、人間には聞こえない高い声を出しているということがわかりました。コウモリはこの音の反射を利用して、暗闇の中でもぶつからずに飛ぶことができたのです。昔の人は、コウモリがこうもりこうな動物だとは知らなかったでしょう。
 私たちの生活の中で、音は大切な役割を果たしています。ものの位置を確かめるレーダーの役目をしているのはもちろんですが、音はコミュニケーションの役割も担っています。言葉を使えば人と人の心を伝えあうことができます。さらに、生活を豊かな楽しいものにしてくれるのが音楽です。私たち人間は、多くのすばらしい楽器を作り出し、音の組み合わせを芸術にまで高めたのです。楽器は、音の世界を豊かにする画期的な発明だと言えるでしょう。

 言葉の森長文ちょうぶん作成委員会(κ)