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課題集 セリ3 の山

○免疫の連携プレー/ 池新
 私たちの身の周りには、細菌、かび、寄生虫など、病気の元になるものがたくさんあります。しかし、私たちは病気の元に出会ったからといって、すぐに病気にかかってしまうわけではありません。なぜなら、体の中には、病気の元になる病原体から体を守るシステムが備わっているからです。このシステムのことを免疫システムといいます。
 体の中には、免疫細胞という細胞が何種類もあり、病原体が体の中に入ってくると、それを攻撃してとりのぞく働きをします。これにはいろいろな方法があります。まず、病原体を丸ごと食べてしまう方法です。血液の中には、赤血球と白血球がありますが、免疫を担当しているのは白血球です。白血球の仲間の好中球こうちゅうきゅうは、食いしん坊な細胞で、体の中に入った細菌などを食べて消化してしまいます。しかし、好中球こうちゅうきゅうだけでは病原体を退治できない場合があります。
 風邪で熱を出したときなど、わきの下や首筋がはれて、さわるとぐりぐりを感じる場合があります。これはリンパせつがはれている状態です。このリンパせつは、体のあちこちに約六百個もあります。免疫システムの主役は、このリンパせつと、リンパせつどうしをむすぶリンパ管です。リンパ管の中にはリンパと呼ばれる黄色っぽい透明な液体が流れています。その中には免疫細胞のリンパきゅうが入っていて、病原体が入ってくると、リンパせつのところで待ち受けて戦いを始めます。
 では、リンパきゅうはどのように病原体と戦うのでしょう。まず、ヘルパーT細胞が、自分の体に本来あるはずのないものが入って来たことに気づきます。そして、攻撃を始めなさいという命令をB細胞に出します。B細胞は、抗体という武器をあやつることができる細胞です。B細胞が作り出した抗体は、効率よく病原体を攻撃することができます。抗体に攻撃されて弱った病原体は、マクロ∵ファージが食べてしまいます。みごとな連携プレーです。
 そのほか、ナチュラル・キラー細胞(NK細胞)も、病原体を攻撃することができます。T細胞やB細胞が見逃すような病原体でも、「何か変だな」と思えば攻撃します。また、T細胞やB細胞は、攻撃を始めるのにある程度時間がかかりますが、その間も、ナチュラル・キラー細胞はずっと攻撃をし続けてくれます。体を守るために、免疫システムは、二重三重にじゅうさんじゅうに防御をしていることがわかります。
 それぞれの細胞の連携プレーによって、病原体がほぼ全滅すると、T細胞の仲間が攻撃をやめるように全体に命令を出します。この命令が出ると、戦いは終了です。
 おどろいたことに、T細胞もB細胞も、一度出会ったことのある敵は決して忘れません。同じ敵が二度目に体に入ってきたときは、一度目よりもずっとすばやく攻撃をしかけることができます。たとえば、はしかの病原体に初めて出会ったとき、B細胞は、抗体を作るのに時間がかかるので、その間に熱が出たり病気のさまざまな症状が出たりします。しかし二度目からは、B細胞がはしかの病原体を覚えているので、すぐに抗体を作り、病原体を退治することができます。抗体によって、あっという間に病原体を後退させてしまうのです。ですから、二度目からは、はしかの病原体が体に入っても熱が出るようなことはありません。このことを「はしかの免疫がある」と言います。
 免疫は、明るい気持ちでいると強くなることが知られています。免疫さえあれば、細菌や寄生虫に囲まれていても元気に暮らしていくことができます。試しに、カビだらけでにこにこ笑っている自分の姿を想像してみてください。何だか楽しくなってくるでしょう。 言葉の森長文ちょうぶん作成委員会(κ)