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課題集 セリ3 の山

○自由な題名 / 池新
○なわとび / 池新
★何かを育てたこと、雪や氷 / 池新

○クマとの共生 / 池新
 最近、人里におりてきたクマによる被害が、ニュースでもときどき報道されています。クマの生息地に近い住宅では、自宅の玄関先にクマがいた、などということもあるようです。キノコ狩りに山に入った人が襲われたりするので、クマは凶暴でこわい動物だと思われています。しかし、はたして本当にそうなのでしょうか。
 現在日本には、北海道に住むヒグマと本州に住むツキノワグマの二種類がいます。ヒグマの方がツキノワグマよりも大型です。ツキノワグマの体重が、人間の大人一人分か二人分ぐらいなのに対して、ヒグマのオスの体重は、ツキノワグマの二倍から三倍にもなります。クマの動きは意外にすばやく、ツキノワグマでも時速四十キロメートルくらいで走れるそうですから、ゆっくりめに走っている自動車くらいの速さは出ることになります。しかも、木登りも得意ですから、追いかけられたら、まず逃げられません。爪は鋭く、きばもあります。確かに、敵に回すと、こわい動物のようです。
 ふだん、山での実や虫、小動物などを食べているクマは、かなり警戒心が強いので、自分から人間に近づいてくることはありません。どちらかというと、人間を恐れていて、できれば出会いたくないと思っているのです。ですから、クマと出会わないようにするためには、クマよけの鈴やラジオなど、大きな音を出すものを持って歩くとよいと言われています。クマの方に、先に逃げてもらうのです。
 それでも、クマが人里におりてくることがあります。秋、冬ごもりの前にたくさんの食べ物を必要としているときと、春、冬ごもりから目覚めてお腹をすかせているときが多いようです。人里には、人間の出した生ゴミが置かれていることがあります。また、果物ばたけや畑には、おいしそうな食べ物がたくさんあります。庭先の柿の木につられてくることもあるようです。∵
 人里に来ることは、クマにとっても人間にとっても望ましいことではありません。人に出くわしたクマが人に危害を加えてしまったり、逆にクマが追われて鉄砲で撃たれて殺されてしまったりすることもあります。しかし、クマを撃ち殺すだけでは、問題の解決にはなりません。クマがこんなに人里におりてくるようになったのはなぜか。その原因を調査して、対策をとらなければならないのです。
 クマが人里におりてくるようになったのには、いくつかの原因が考えられます。クマのすみかの山が人間の開発で荒らされ、クマの食べ物が少なくなっているという説があります。あるいは逆に、山の食べ物がたくさんあるのでクマが増えているからだという説もあります。そして、人里に行けばおいしい食べ物がたくさんあると、クマが知ってしまったことも、大きな原因と考えられています。
 では、解決法にはどんなものがあるでしょうか。今、さまざまな団体が、クマの生活を調査し、クマと人間がどちらもうまくやっていけるように、いろいろな方法を試しています。
 もともと、クマたちが住んでいたところへ後から入ってきて、山を切りひらき、町を作ったのは人間です。本当のことを言うと、クマもくまっているのです。人間はもっとクマの気持ちをくまなければならないのかもしれません。「みなさんのすみかの近くにおじゃましてごめんなさい。でも、あまり私たちの方へはおりてこないでほしいのです。その代わり、毎年お歳暮に、たっぷりのハチミツを贈りますから、どうぞ食べてください」などという「大人の付き合い」が、クマともできるとよいのでしょう。

 言葉の森長文ちょうぶん作成委員会(τ)