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課題集 セリ3 の山

○自由な題名 / 池新
○寒い朝、体がぽかぽか / 池新


○筋肉の働き / 池新
 私たちの体を動かすために、筋肉はとても大切なものです。筋肉というと、きたえぬかれた肉体をもつボディビルダーを思い浮かべるかもしれませんが、筋肉は、動物にとって生命活動をいとなむためになくてはならない重要な組織なのです。
 私たちが走ったり歩いたりジャンプしたりするために、筋肉が働いているのは言うまでもありませんが、運動するときに働く筋肉は、骨格筋こっかくきんといって、骨にしっかりとむすびついて骨を動かしているものです。この筋肉は、私たちが動かそうと思えば自由に動かすことができます。顔にも、表情を作り出すたくさんの筋肉が複雑に入り組んでいます。これは骨格筋こっかくきんではありませんが、自分の意志で動かせる筋肉です。笑い顔や泣き顔や困った顔など、心の動きに合わせて私たちはいろいろな表情を作ることができます。
 筋肉が働くのは、運動するときだけではありません。私たちの内臓が毎日動いているのも、内臓の壁を作っている筋肉のおかげであり、たとえば心臓が動くのは心筋という筋肉が動いているからです。この心筋は、生まれてから死ぬまで、休むことなく一定のリズムで動いて、体中に血液を送っています。内臓の筋肉は、自分の意志で動かすことはできません。
 自分の意志で動かせる骨格筋こっかくきんについて考えてみましょう。腕を曲げると、りっぱな力こぶができる人がいます。筋肉があまりない女の人でも、さわってみると、少しは力こぶができているのが確認できます。この力こぶは腕の筋肉が縮んだときにできるもので、筋肉が力を発揮するのは、このように縮んだ状態のときです。
 オリンピックの陸上選手を思い浮かべてください。短距離を走る選手の筋肉は、みごとに発達していて、いかにも力強い感じです。しかし、マラソンのような長距離の選手はどうでしょう。∵ほっそりとして、華奢な体つきの選手がほとんどです。あの細い体のどこにあれだけのパワーがひそんでいるのかと、不思議に思えるほどです。では、マラソン選手が、短距離選手のように筋肉を発達させたら、もっと記録をのばせるのでしょうか。そうはいきません。
 私たちの骨格筋こっかくきんには、縮み方が速く瞬時に大きな力を出せる速筋そっきんと、縮む速さがおそいかわりに持久力にすぐれた遅筋ちきんがあり、短距離走者には速筋そっきんが多く、長距離走者には遅筋ちきんが多いといわれています。それぞれの必要な筋肉の種類が異なるわけです。遅筋ちきんは、赤い色のタンパク質を多くふくんでいるので「赤い筋肉」、速筋そっきんは「白い筋肉」とよばれることがあります。
 おもしろいことに、「赤い筋肉」「白い筋肉」は、魚にもあります。みなさんは、マグロの身が赤く、ヒラメの身が白いことを知っているでしょう。マグロやカツオのように長距離を泳ぐ魚には遅筋ちきんが多くついているので、肉が赤身になり、ヒラメなど海底にじっとしていることの多い魚はほとんど速筋そっきんなので、肉が白身になります。つまり、マグロは長距離走者、ヒラメは短距離走者に似ているというわけです。
 もし、マグロの赤身とヒラメの白身の両方を持っている魚がいたらどうなるでしょう。身が赤と白なので、おめでたい魚として、お正月のカマボコのかわりに使われるようになったかもしれません。
「マグロさん、どうでしょうか。」
「マー、グロテスク。」
「ヒラメさん、どうですか。」
「そんな魚、ヒラメえなあ。」

 言葉の森長文ちょうぶん作成委員会(κ)