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課題集 セリ3 の山

○恐竜はなぜ絶滅したか/ 池新
 恐竜は、およそ二億三千万年前に出現しました。しかし、今から六千五百万年前に、なぜか突然のように、地球上から姿を消してしまいました。なぜ恐竜は、絶滅してしまったのでしょうか。その理由について、研究者たちから多くの考えが出されています。
 そのひとつは、巨大隕石いんせき説というものです。宇宙から巨大な隕石が落ちてきて、地球に衝突したのではないかという説です。そのため、ガスや細かいちりが発生して地球をおおいつくし、半年近くも太陽光線をさえぎりました。まっくらな大地で植物は枯れ、気温も下がりました。植物をエサとする草食恐竜たちは、飢えと寒さで次々と倒れ、死んでいきます。すると、その草食恐竜をエサにしていた肉食恐竜たちも死に絶えます。こうして、地球上の恐竜たちは絶滅してしまったとする考えです。
 ほかに、火山噴火説という説もあります。そのころ、地球のいろいろなところで火山が爆発しました。噴出した二酸化炭素で、地球は急激に温暖化しました。このため食べられる植物が、すっかり枯れてしまったのです。さらに、噴火によって塩素が大量に放出され、地球を取り巻くオゾン層も破壊されました。この結果、有害な紫外線が地上に降り注ぎ、恐竜をはじめとする多くの生物が死に絶えたという説です。
 さらに、ストレス説という考えもあります。恐竜の数がどんどん増え、地球はいたるところ恐竜だらけになってしまいました。満員電車に乗っているような状態です。このストレスで、異常のある卵が生まれるようになりました。また、たくさんの恐竜たちが植物を食べつくし、エサも少なくなってしまいました。このため、恐竜の数が減っていき、ついには絶滅したというのです。∵
 おもしろいところでは、便秘説というものもあります。そのころ、地球上に多くはえていたソテツは、草食恐竜の大切なエサでした。このソテツには、草食恐竜が排泄をするために必要な成分がふくまれていたのです。ところが自然環境の変化で、このソテツは少なくなってしまいました。草食恐竜たちは便秘になり、死んでしまいました。すると肉食恐竜たちもエサがなくなり、生き続けることができません。あの大きな恐竜たちが便秘で絶滅してしまったなんて、運が悪くてかわいそうな、しかしちょっと情けないような話です。
 さて、どの考えが一番正しいのでしょうか。実は、それはわかっていません。恐竜絶滅の理由は、まだまだ大きな謎につつまれています。
 しかし、恐竜は一億六千万年以上もの長い間、この地球上でゆうゆうと生きました。一億六千万年。気が遠くなるような、長い年月です。わたしたち人類は、誕生してから今日まで、まだ数百万年しかたっていません。恐竜の生きた時間をかりに一年とすると、人類の生きてきた時間はわずか数十日ほどという計算になります。今、我がもの顔にこの地球を支配している人類も、恐竜に比べたら、まだほんのわずかしか生きていないのです。
 そう考えると、恐竜は十分にこの地球上で生きつくしたとも言えるでしょう。わたしたち人類も、恐竜のように長くたくましく生きていきたいものです。そして、少なくとも人類が便秘で絶滅することだけは避けなければなりません。それは、ちょっと格好悪いからです。

 言葉の森長文ちょうぶん作成委員会(γ)