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課題集 サツキ3 の山

○自由な題名 / 池新
○家族(かぞく)の長所 / 池新


○ハチの社会 / 池新
 朝早くから夜遅くまで、一生懸命働くことを「働きバチのように働く」と言うことがあります。忙しく花の周りを飛び回ってせっせと蜜や花粉を集めて巣へ運ぶ働きバチの様子が、日本のサラリーマンの働き方に似ていることからできた言葉です。働き者というよりは、むしろ働き過ぎという悪い意味で使われることが多いようです。しかし、働きバチたちは、本当に長い時間忙しく働いているのでしょうか。
 ある学者が、働きバチに背番号をつけて観察をしました。それによると、働きバチが一日に働く時間は五、六時間で、それ以外の時間は巣の中でのんびり過ごしていることがわかりました。日本人の一日の平均労働時間は約八時間ですから、人間の大人の方がよっぽど働いているように思えます。
 ミツバチもそうですが、、多くの動物は、よけいな仕事はできるだけしないようにして、休息の時間が多くなるような生活をしています。豊かな暮らしのためにたくさん働こうとする人間とは、全く逆の生活に見えます。敵の攻撃から巣を守り、なわばりをつくり、生き抜いていく必要のある動物にとっては、財産よりも休息のほうが意味があるというわけです。
 さて、パワーのある働きバチはオスでしょうかメスでしょうか。意外なことに働きバチはすべてメスです。人間の社会も、サラリーマンという男性中心の社会から、キャリアウーマンという女性が活躍する社会になりましたが、ハチの世界の方が一歩進んでいたようです。
 働きバチは、生まれてから期間ごとに仕事の内容を変えて行きます。羽化してから五日ほどは、巣のそうじをし、その後十二日目くらいまでは女王や幼虫の世話をします。二週目から三週目ほどは巣作りや、蜜を巣にためる仕事をします。それから四週目までは巣∵の見張りをするようになり、やがて外に出て蜜集めをするようになります。巣の内側の仕事から、段階を追って外回りの仕事になっていく様子がわかります。働きバチの寿命は六、七週間ですから、年を取るにつれて、巣から離れて遠くまで蜜を取りに行ったり、敵と戦ったりする危険な仕事になっていることがわかります。
 それでは、ハチの世界の男性、オスバチは何をしているのでしょう。オスは、女王バチと一緒に子供をつくるとき以外は、巣の中で何もせずにただ暮らしているだけです。しかし、そんなオスバチにバチが当たるようなことはありません。ハチの社会は、心優しい働き者の女性たちで支えられているのです。
 今日もハチたちは、花から花へ蜜を集めて回っています。
「あ、ミツ、ミツけた。」
「じゃあ、仲間に知らせてこよう。おーい、ミツ……」
「バチン。」
「あいたたた。ハチ合わせしちゃった。」

 言葉の森長文ちょうぶん作成委員会(μ)