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課題集 サツキ3 の山

○自由な題名 / 池新
○スポーツをしたこと、たまごを使った料理 / 池新
★体育の時間、とくいなこと / 池新

○アジサイの花の色 / 池新
 梅雨の季節をいろどってくれる花に、アジサイがあります。この花は、いろいろな色に変化することで有名で、そのせいか、花言葉には「移り気な心」などというものもあります。そのほかの花言葉、「強い愛情」や「家族の結びつき」は、きっと、小さい花がたくさんあつまって咲いているところからきたのでしょう。
 アジサイの花の色は、咲き始めの緑がかった白っぽい青色から、薄いピンク、紫、そしてしだいに濃い紫や藍色に変わっていきます。色がついているこれらの部分は、じつは花びらではありません。葉が変化したもので、「がく」と呼ばれることもあります。本当の花は、このがくの真ん中に、ちょこんと小さく丸くついています。このように花以外の部分が発達して花のようになっている花を装飾花と言います。南国の雰囲気を持つブーゲンビリアや、クリスマスに飾られるポインセチアなども装飾花です。
 では、アジサイの花は、どうして色が変わるのでしょうか。
 どんな色のアジサイも、その色の素になっているのは、アントシアニンという色素です。この色素は、条件によって、赤い色を出したり、青い色を出したりすることができます。ここで、色の鍵を握っているのが、アジサイが土の中から吸い上げる、アルミニウムという金属です。一円玉は、このアルミニウムで作られています。土の中には、アルミニウムをはじめ、いろいろな金属が目に見えない形で溶けています。これを植物の根が吸い上げるのです。
 アルミニウムが多いと、アジサイは青くなります。逆に、アルミニウムが少ないと赤くなります。その中間は紫です。このアルミニウムは、土の性質が酸性だと、土の中にイオンとして溶け出すので、アジサイが吸い上げやすくなります。逆に、土の性質がアルカリ性だと、アルミニウムはアルカリと結びついてえんになってしまうので、アジサイが吸い上げにくくなります。こうして、土の∵性質によって、アジサイの色は変わるのです。ですから、おとなりのアジサイの色が気に入って分けてもらい、わが家に植えても、同じ色になるとは限りません。
 ところで、日本のアジサイを世界に紹介したのは、江戸時代の終わりごろに日本にやってきたドイツ人の医者、シーボルトでした。この時代の日本は、鎖国の状態で、人も物も自由に外国と行き来することはできませんでした。しばらくのあいだ日本に暮らした彼は、植物にもたいへん興味を持ち、日本のいろいろな植物を持ち帰りました。シーボルトは、その中でもひときわ大きくてきれいなアジサイに、「オタクサ」という名前をつけました。これは、シーボルトが日本にいるときに愛した女性、「お滝さん」の名前です。ドイツに戻ったシーボルトは、庭にそのオタクサを植えて、「オー、タクサんのオタクサが咲いた。」と見とれていたかもしれません。
 アジサイと同じように、人間も、好きな人の前で赤くなったり、宿題を忘れて青くなったりしますが、これはアルミニウムとは関係ありません。

 言葉の森長文ちょうぶん作成委員会(τ)