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課題集 サツキ3 の山

○自由な題名 / 池新
○仕事をしたこと / 池新
★清書(せいしょ) / 池新

○命を救った犬ぞり / 池新
 シベリアやアラスカといった、寒さの厳しい地方で暮らす人々は、古くから、人や物を運ぶために、犬ぞりを使ってきました。シベリアン・ハスキーやサモエド、アラスカン・マラミュートといった種類の、寒さに強く、力持ちの犬たちにそりを引かせるのです。これらの犬たちは、ふさふさした毛と厚い脂肪を持っているため、北極の氷の上で眠っても平気です。また、長い距離を走っても耐えられる、すぐれた体力の持ち主です。
 なかでもハスキー犬は、探検家ピアリーやアムンゼンによる北極や南極探検に使われ有名になりました。また、ドッグレースや犬ぞりレースで、いつも優秀な成績を収めていました。
 あるとき、アラスカのノームという町に、ジフテリアという恐ろしい病気がはやりました。現在では多くの国で予防接種が行われているので、ジフテリアはほとんど流行することがありません。しかし、当時はまだ、おおぜいの人が死ぬこともある怖い病気でした。ジフテリアの症状を抑えるには、ワクチンという薬が必要ですが、この時ノームの町では、ワクチンが底をついてしまいました。あまりに患者が多かったからです。このままでは、人々がどんどん死んでしまいます。
 ノームの町からアラスカ州の政府があるアンカレッジに、助けを求める連絡が入りました。すぐにでも、ワクチンを送らなければなりません。しかし、その時はとても天気が悪く、猛吹雪が続き、飛行機を飛ばすことができません。自動車でさえ走れないようなひどい嵐です。ワクチンをラクチンに運べるような状況ではありませんでした。
 「そうだ。犬ぞりで運ぼう。」政府は、そう決断しました。そして、すぐさま村々に連絡が行きました。ただちに二十の犬ぞりチームが、ワクチンを届けるために準備をしました。
 外は、マイナス五十度にもなる厳しい寒さと、荒れ狂う吹雪で∵す。この中を、二十の犬ぞりチームは五日間かけて走り通し、ワクチンは無事にノームに届けられたのです。このおかげで、数百人の命が救われました。
 このときの働きをたたえて、ハスキー犬の銅像が、ニューヨークのセントラル・パークに立てられています。また、この出来事を記念して、毎年、世界でいちばん難しくいちばん長い犬ぞりレースがアラスカで行われるようになりました。このレースは、アンカレッジからノームまでを人間一人と犬たち十数匹で走るレースです。ふつう、ゴールするのに三週間くらいかかるそうです。
 犬たちのがんばりも相当なものですが、人間の根性もたいしたものです。こんなに大変なレースの後では、犬たちに号令をかけ続けた人間の声もしわがれて、きっと「ハスキー・ボイス」になってしまうことでしょう。
 寒い地方で使われる犬ぞりのほかに、日本にもさまざまなそりがあります。有名なところでは、エビぞり、ひげそり、のっそり、ごっそり、もっそり、こっそり、ひっそり、げっそり、などです。

 言葉の森長文ちょうぶん作成委員会(τ)