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課題集 サツキ3 の山

○自由な題名 / 池新
○家で飼(か)っている生き物のこと / 池新


○森の掃除屋、キノコ / 池新
 秋の雨あがりの日に、林に出かけると、たくさんのキノコが落ち葉の間から顔を出しています。色とりどりのキノコの中には、食べられるキノコもたくさんあります。毒キノコと食べられるキノコは、どうやって見分けたらよいのでしょう。毒々しい派手な色のキノコや、嫌な臭いがするキノコは毒キノコである、茎が縦に裂けるものは食べられる、ナスと一緒に煮れば毒が消えるなど、昔からの言い伝えはたくさんあります。しかし、これらの多くは迷信です。キノコ中毒を防ぐには、とったキノコを一つ一つ図鑑などできちんと調べる必要があります。
 食用キノコの代表は、マツタケやシメジ、シイタケなどです。「香りマツタケ、味シメジ」という言葉があるように、マツタケはたいへん香りが良く、シメジは味の良いキノコです。タマゴタケは、あざやかな色をしていて、毒キノコと間違えられますが、西洋では「帝王のキノコ」と言われ、おいしい食用キノコです。毒キノコの代表は、テングタケやツキヨタケなどで、ドクツルタケは、うっかり食べると死んでしまうほどの猛毒があります。
 キノコの体は、地面から出ている部分だけではありません。地下の部分を見ると、白い綿のように、細い糸がからまっているのがわかります。キノコの本体は、この菌糸体という部分なのです。地面から出ているキノコは、たいてい数日で腐ってしまいますが、菌糸体は何十年も成長し続けます。菌糸体は、円形に広がるように大きくなっていくので、キノコも輪になって生えていることがよくあります。キノコりに行って、キノコを一つ見つけたら、そこから輪を描くようにキノコが生えていないか、よく探してみるとよいでしょう。
 普通、植物には緑色みどりいろの葉緑素があり、太陽の光を受けて光合成を行い、自分で栄養を作って成長します。しかし、葉緑素を持っ∵ていないキノコは、自分で栄養を作り出すことができません。キノコは、カビや細菌と同じ仲間で、菌類に分類されます。では、菌類はどこから栄養をとっているのでしょうか。
 キノコの生える森や林では、大量の落ち葉や動物の死骸など、たくさんのゴミが出ます。しかし、森や林がゴミだらけになっていることはありません。実は、落ち葉や死骸などのゴミを食べているのが、キノコやカビという菌類なのです。生き物の死骸を分解して、食べてくれる菌類は、森の掃除屋のような役割をしています。みなさんも、自分の部屋を掃除せずに、ずっとゴミを散らかしておくと、ゴミの中からかわいいキノコが顔を出すかもしれません。
 植物が光合成をするには、二酸化炭素などの原料が必要です。もし、二酸化炭素を補給しないで、地球上の植物が光合成を続けたら、数百年で二酸化炭素はなくなってしまいます。しかし、植物は何億年もの長い間、生き続けてきました。実は、これはキノコなどの菌類のおかげなのです。動物や植物の死骸は、菌類の酵素によってだんだん単純な物質に分解されていきます。こうして、動植物のからだを作っていた物質は、菌類の働きによって、もとの単純な水や二酸化炭素などの物質に戻るのです。
 そんな重要な役割を果たしているキノコさんに聞いてみました。
「キノコさんは木の子なんですか。」
「いや、ぼくはキノコの子だよ。」
「すると、キノコさんの子は、キノコノコですね。」
「そう、そのまた子供はキノコノコノコだよ。」
「十代先まで言えますか。」
「キノコノコノコ ノコノコノコ ノコノコノコ……。」
「歩いて行っちゃった。」

 言葉の森長文ちょうぶん作成委員会(κ)