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課題集 ヌルデ3 の山

○自由な題名 / 池新
○うれしかったことや悲しかったこと / 池新
○わたしのしているスポーツ / 池新

★古代の世界では、 / 池新
 古代の世界では、花をつけない裸子植物が繁茂(はんも)したといわれています。次に、花をつける被子植物が現れ、それが広がって、今、被子植物中心の世界になってきています。花をつけることによって動物とのかかわり合いができ、その種類の植物の繁栄があったというとらえ方がされています。
 なぜ、動物たちは花に集まるのでしょうか。いうまでもなく、花粉を運ぶためではありません。それは結果であって、目的ではないのです。
 動物たちが花に集まるのは、自分たちの生活のためです。昆虫は、自らのおなかを満たすために、蜜を吸い、花粉を食べに花に向かいます。また幼虫を育てるため、蜜や花粉を集めます。花に行ったら、たまたま体に花粉がついて、その体でまた別の花に飛び移ります。
 結果的に、動物たちは花粉を運んであげる代わりに蜜と花粉を食べさせてもらい、花は花粉や蜜を提供する代わりに花粉を運んでもらっていることになりますが、両者にギブアンドテイク、駆け引きの気持ちはもちろんありません。
 AとBの植物があり、ある時、Aの中に蜜をわずかでも作る植物ができたとします。昆虫は蜜のあるAのほうへ寄り始めます。昆虫が来てくれれば、花粉を運んでもらえます。他の自分の仲間の花に花粉がつき、子孫も増えます。一方、蜜が作れないBには、昆虫はあまり集まりません。花粉が運ばれないと子孫はできません。やがてBはこの世からすたれ、蜜の出るAの植物が生き残ることになります。
 このように、進化の過程で、動物とかかわるための有利な条件を持つ植物が繁栄してきました。
 では、動物たちがエサにする花の蜜や花粉には、どのような栄養があるのでしょうか。
 花の蜜は糖分をたくさん含んでいます。糖分の主なものはショ糖∵ですが、果糖やブドウ糖、少量のアミノ酸、有機酸も入っています。いずれも昆虫にとってはエネルギー源になります。
 昆虫たちの目当ては蜜だけではありません。花粉も重要な食料なのです。花にとっては、花粉を食べられると、それだけ運んでもらえる花粉が少なくなるので不都合にも思えますが、食べられても大丈夫なくらい、花は多くの花粉を作っています。
 花粉には、栄養がたくさん詰まっています。たんぱく質、炭水化物、脂肪、無機成分などの栄養素に富んでいます。炭水化物としてはでんぷん、ショ糖、ブドウ糖、果糖などを含んでいます。また、いろいろなアミノ酸も含まれています。
 前にお話ししましたように花粉はいわゆる生殖細胞で、めしべに付着してから花粉管を自力で伸ばしていくのですから、それだけの栄養分を蓄えているのもうなずけます。〇・一ミリメートルにも満たない大きさの花粉が、十センチメートルにも達する花粉管を伸ばすことができるのですから、とてつもない生長力です。それを可能にする養分を持っている花粉は、それ自体栄養価の高い食糧ということができます。
 カブトムシやコガネムシ、ハナムグリはよく花粉を食べます。ミツバチやマルハナバチは、花粉を蜜でだんご状に固めて、脚につけて巣に運びます。そして、幼虫に食べさせます。昆虫たちにとって、花粉は貴重なたんぱく源であり、主食なのです。


(武田幸作「アジサイはなぜ七色に変わるのか?」)