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課題集 ヌルデ3 の山

○自由な題名 / 池新
◎小さいころから大切にしているもの / 池新
★おいしかったことまずかったこと / 池新

○じつは地球に / 池新
 じつは地球にふんだんにある空気は、地球にもともとあったものではないのです。また雨や川や海という大量の水もありませんでした。これらがどうして地球にあるようになったのかは、しばらく前までは謎でした。
 一つの説は、宇宙空間にあるガスが地球の引力に捕まって地球の空気になったというものでした。空気のような軽いものにも引力ははたらきます。薄いながら宇宙空間にガスはあるので、これはいちばんありそうな説でした。しかし宇宙空間のガスの成分を調べると地球の空気とはまったくちがうもので、これではいまの空気の説明はつきません。
 宇宙空間からのものではなかったら、地球の空気はどこからきたのでしょうか。それは地球のなかから出てきたものにちがいありません。
 火山が原因だという説もありました。いま現在地球のなかから出てきているガスとしては、火山からのガスがあります。火山からはガスも水蒸気も大量に出てきています。成分からいえば、火山ガスは空気と似ています。だから地球の空気も水もすべて火山から出てきたにちがいないという説があったのです。
 しかし、この説には難点がありました。それはガスが出てきた時間の長さでした。もし火山から地球のすべての空気や水が出てきたとしたら、火山は何十億年もの長いあいだかかって少しずつ地球の空気と水をつくっていったはずなのです。なぜなら地球上で火山がある場所はごくかぎられていますし、火山の数もそれほど多くはありません。だから地球上のすべての空気と水が火山から出てくることは、あまりに大量すぎて短いあいだには不可能だったのです。
 地球で見つかった約四十億年も前の岩を調べてみると、もともとあった岩が粉々に砕かれて海の底に積み重なって、さらにそれが熱や圧力で変化した変成岩という岩でした。四十億年以上も昔に海があったのです。それゆえ少しずつ火山からガスや水が出てきたのでは説明がつかなくなってしまうのです。
 火山が起源だという説はこうして消え、結局、地球が生まれてから二、三億年以内というごくはじめのころから大量のガスと水蒸気∵とをもっていたにちがいないということになりました。しかしどのように空気が生まれたのかは、まだはっきりわかっているわけではありません。地球がつくられていったときに星くずがはげしく衝突して、ガスや水蒸気をはきだしたり、地球がいったん溶けていた時代には、地球をつくった材料だった隕石(いんせき)のなかに少しずつふくまれていたガスや水蒸気がはきだされたものだと考えられています。
 このときにできたのが原始大気といわれるもので、そのころの地球は厚い雲におおわれていたのです。原始大気には窒素や水蒸気はふくまれていましたが、いまの空気とちがって酸素はほとんどなく、また二酸化炭素がいまの何千倍もふくまれていました。まだ生物が住める環境ではなかったのです。
 やがて地球は少しずつ冷えていき、原始大気のなかにある水蒸気ははげしい雨になって地表に降りそそいで地球の上にはじめて海をつくったのです。そして原始大気の中の二酸化炭素は、海水中に大量に溶けていくことによって減りつづけました。海水に溶けた二酸化炭素は、やがて石灰岩などの岩石のなかに取りこまれて海水や大気のなかからは減っていきました。中国の内陸に不思議な形をした岩が林立している桂林けいりんというところがありますが、この岩も大昔につくられた石灰岩です。その後雨の侵食を受けて溶けていって、いまの不思議な姿になったのです。つまりここでは、岩のなかの二酸化炭素がふたたび水のなかに少しずつ戻ってきていることになります。
 ところで、いま地球にある空気のうち、酸素だけは地球のなかから出てきたわけではありません。地球の激動期が終わって地球の表面の温度が下がってからは地球に生命が生まれ、やがて進化して植物が生まれました。これは三十数億年前のことです。その植物が太陽の光と二酸化炭素から光合成で酸素をつくったのです。

(島村英紀「地球がわかる50話」)