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課題集 ナツメ3 の山

○自由な題名 / 池新
○私のおまじない / 池新
★清書(せいしょ) / 池新

○いったい、ジャングルの破壊は / 池新
 いったい、ジャングルの破壊は何が原因なのでしょうか。
 こうした地球的規模の問題には、次にあげるふたつの大きな、根本的な原因があると思います。ひとつは、ジャングルがある国はいずれも発展途上国であり、貧しいこと。もうひとつは、先進国のむだの多いライフスタイル(暮らし方)です。
 まず発展途上国の場合は、人口増加にともなって、ジャングルを大規模に切り開いて農地にしたり、都市の人々を移住させたりしています。また薪木の消費量が多くなり、森がどんどんへっているため、女性は何時間もかけて遠くの森まで薪木を拾いに行かなくてはならないような状況も生じています。薪木が手にはいりにくくなったからといって、燃料をガスや電気にかえることもできません。こうした結果が、ジャングルの破壊につながっているケースもあります。
 また発展途上国にとっては、ジャングルの木々が重要な資金源でもあります。ジャングルは自然がつくったものですから、新たに何かをつくり出す必要がなく、切って輸出すればお金になります。マレーシア、インドネシア、フィリピンなど、ジャングルの破壊が大きな問題になっている国では、いずれも木材の輸出が国の経済の柱となっています。
 しかし発展途上国の経済を支える熱帯の木材も、価格は今、戦後最低です。結局、今の世界全体の経済構造そのものが、豊かな先進国が動かしているような感じですから、いつも買いたたかれてしまうんです。安いから、いくら切って売っても、たいしてお金にはならなくなってしまっています。
 ただでさえ苦しい国の経済状況に加えて、外国からの借金も返さなくてはなりません。そのためには、ジャングルを伐採するのもいたしかたない、伐採をやめるわけにはいかないという事情があるのです。
 そのいっぽう、豊かな先進国では使い捨てのものがふえるなど、∵むだの多い暮らし方が広まっています。これも、ジャングルを減少させているのです。
 たとえば、ファストフードの代表格であるハンバーガー。とくに欧米のハンバーガーをつくるための安い牛肉は、中南米産がほとんどです。中南米のジャングルは、この肉牛用の大規模な牧場建設のために、半分以上がなくなってしまったのです。
 豊かな先進国では、ハンバーガーを食べなくても、他に栄養源はいくらでもあります。木材にしても、なにも熱帯の木でなくてもかまわないでしょう。つまり、先進国の人々には選択の余地がいくらでもあり、その暮らし方を少し変えさえすれば、ジャングルの減少や破壊をくいとめられます。
 焼畑農業にしてもそうですが、これまでジャングルの伐採に関する主だった研究は、先進国の人間によって行われてきました。出版された本も、先進国の立場から見たものが多かったのです。
 過去にこんな例がありました。先進国によってジャングルに木を植えるという試みが行われたのですが、木は育ったものの、ジャングルに住む人々にとっては、ちっとも役に立たなかったのです。
 植えられた木はやせ地でも、比較的育ちやすく、生長の早いユーカリやアカシアなどでした。これらの木は、二年もたてば五メートルくらいになるのです。ところが早く、大きく育つのは結構なのですが、これらの木が他の木に必要な養分も全部奪ってしまいます。ですからそこは、ユーカリやアカシアだけの森となり、もとのジャングルとは似ても似つかぬ姿になってしまうのです。そんな森には、動物や鳥もすみつかなくなるでしょうし、そうなったら、人々はその森から食べ物はおろか、肥料も飼料も得られなくなってしまいます。
 この例からもわかるように、「科学」や「技術」、「開発」とはなにか、だれのためのものか、あらためて考え直してみることが必要だと思います。

(生きている森編集委員会編「未来の森 森があぶない」)