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課題集 ナツメ の山


 5.2週
 あくる日、学校へいくと、矢田、足立、根本、堀の四人が、よってたかって、レオナのズボンをぬがそうとしている。
「やめろよー。」
 思わず大声で、ぼくは叫んだ。
「なんだと? おもしれえ。おまえ、おれにさからうのか。」
 矢田が、ニヤリとわらった。
 次の瞬間、矢田は両手をひろげて、ぼくにおそいかかってきた。ぼくはひっしで、おうせんした。でも、矢田のほうが、ぼくよりずっと体がでかい。
 そこへ、ひきょうにも足立たちが矢田にかせいしたもんだから、もう、こてんぱんさ。おまけに、みんなは知らん顔――。
 以前は、ぼくもそうだった。いま、自分がやられて初めて、ぼくはみんなの無関心さにはらがたった。よってたかってやられて、初めて、やられるやつの気持ちがよくわかった。くやしくて、ぼくは涙がでた。
 すると、レオナがぼくのかたに手をかけて、こういうんだ。
「ごめんね。ぼくのために……。いいんだよ、ぼくのことなら、ほうっておいて。なにもきみまで、痛い目にあうことはないよ。それに、どんな場合でも、暴力はよくないな。たとえぼくのためでも、ぼくはうれしくないな。」
「なにいってるんだ。さきに手をだしたのは、むこうのほうなんだぞ。」
 地だんだをふんで、ぼくはわめいた。
 そんなぼくをレオナはなんともいえない悲しそうな目で見つめ、
「きみだって、かれをなぐったじゃないか。」
「じゃあ、じゃあ、なぐられてもなぐりかえすなっていうのかよ。やられても、ただ、がまんしろっていうのかよ。」
「いいじゃないか、べつに、なぐられたって。なぐられた痛みなんか、すぐに消える。ぼくはだれかをなぐるより、自分がなぐられたほうが、ずっといいな。」
「…………。」
 ぼくは、すっかり、ひょうしぬけしてしまった。ばからしいような、それでいて感動したような。へんな気持ち――。
(まったく、こいつ、なんて、なんて……。)
 頭の中で、ぼくはことばをさがした。ぴったりしたことばを見つけるのに、数秒かかった。(まったく、こいつ、なんてやさしいんだ……。)
 そのころからだ。放課後、レオナの家へ遊びにいくのが、たのしみになったのは。
 もう、前のように、しょうこをつかんでやろうなんて気持ちからじゃない。
 いや、それもあるにはあったけど、けっしてわすれたわけじゃないけど、でも、ぼくはやっぱりたのしかった。レオナとふたりで、公園や林を散歩するのが。あいつを自転車の後ろにのせて、図書館へいったり、あいつのために、チョウやハチをつかまえてやったりするのが。
 レオナは昆虫採集と、植物採集が趣味で、あいつの家の押しいれは、そのための道具、作った標本や観察ノートでいっぱいだった。
 かわった種類の草花や虫を見つけると、ぼくらはすぐに図書館へいき、名前をしらべた。

「宇宙人のいる教室」(さとうまきこ)より