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課題集 ナツメ の山


 もしも、レオナがほんとうに宇宙人だとしたら、ぐずぐずしてるとたいへんなことになっちゃうぞ。レオナが、ぼくたちそっくりの宇宙人を送りこみ、学校が基地になる前に、なんとかしなくちや。
 五時間目がはじまっても、ぼくの頭の中は、そればっかり。
 だれかに相談しようか。でも、だれに?
 あらためて考えてみると、ぼくにはなやみや心配を打ちあけるような友だちは、ひとりもいないんだ。
 そりゃあ、友だちはおおぜいいるよ。いっしょにカンケリをしたり、サッカーをしたりする友だちは。だいたい、ぼくは、これはうちのお母さんがいうんだけど、だれとでも、よく遊ぶんだ。
 でも、ほんとうに、心をゆるせる友だちはひとりもいないのさ。
 それに、こんなこと、どうせはなしたって、だれも、信じてくれないだろうし……。
 そんなある日。
 それは、五月にはいったばかりの、ぽかぽかとあたたかい日だった。
 昼休み、ぼくとしオナは、いつものように、校庭の花だんのわきの、青いベンチに腰をおろしていた。レオナは女みたいに花が好きで、昼休みはたいていここですごすんだ。
「ああ、いいかおりだなあ。バラのかおりほどすばらしいものが、この世にあるだろうか。」なんていいながら、レオナは赤いバラに顔をよせて、くんくん、くんくん。
 そのそばで、ぼくはぼんやり、校庭をながめていた。ドッジボールをしているやつ、サッカーをしているやつ、キックベースをしているやつ。みんなの声が、わーんとひとつになって、青空にすいこまれていく。
 ああ、ぼくもみんなといっしょに、思いっきり、遊びたいなあ。
 すると、そこへ、ボールかた手に、矢田が通りかかった。
「よう、テツヤ。きょうもふたりでなかよく、お花見かよ。」
といって、矢田はおどかすように、ぐっとぼくに顔を近づけて、
「おまえなあ、ばかとつきあうと、ばかがうつるぞ。そうか、もううつったか。ならいいや。あばよ。」
「おい。ちょっとまてよ。」
 ぼくはさっと立ちあがった。ちくしよう、人の気も知らないで。ぼくだって、好きでこんなことしてるわけじゃないんだぞ。
「ちょっとこいよ。話があるんだ。」
 ぼくはぐいぐい、矢田のうでを引っぱって、少しはなれた木の下につれていった。そして、レオナに聞こえないように小さな声で、
「いいか。これはひみつだぞ。ぜったいにだれにもいうなよな。じつは、ぼくがレオナとつきあっているのは、わけがあるんだ。そのわけっていうのは……あいつ、宇宙人かもしれないんだよ。」
 ところが、矢田のやつ、でっかい声で、
「レオナが宇宙人!?あはは……そいつはいいや。あはは……。」
 レオナが、さっとこちらをふりかえった。その時、ぼくは、たしかに見たんだ。レオナの目が、まるでねこみたいに、キラッとみどり色に光るのを……

「宇宙人のいる教室」(さとうまきこ)より