昨日828 今日399 合計163559
課題集 ナツメ の山


 4.3週
(やっぱりな。思ったとおりだ。)
 遊歩道のアジサイの茂みのかげで、ひとりでぼくはうなずいた。カステラみたいにならんでいる団地のはずれには、小さな林がのこっている。
 もしも、UFOをかくすとしたら、あの林しかない。あそこはチカンがでるからって、学校ではいっちゃいけないことになっていてめったにだれもよりつかないんだ。
 前に一度、鈴木たちと探検にいったことがばれて、先生にこっぴどくおこられたっけ。
 これはゆうべ、ふとんの中で考えたんだけど、きっとレオナはUFOで、あの林に着陸し、かれ枝かなにかで、かくしたんだ。 でも、ぼくに正体を知られそうになったんで、心配になり、こうして見まわりにいくんじゃないか?
 あるいは、かくしてあるのは、通信機で、これからなかまと連絡を取ろうとしているのかもしれない。
 林に近づくにつれて、ぼくのむねはしだいにドキドキしてきた。
 ようやくレオナが、林にさしかかった。一歩一歩、やつは奥へ進んでいく。林の木は、どれも細く、ひょろんとしていて、身をかくす役には立たない。
 ぼくは三メートルくらい距離をおいて、足音をしのばせて、あとをつけた。
 やがて、レオナが立ち止まり、あたりを見まわした。なにかをうずめた場所を、思いだそうとしているみたいだ。
 それから、地面にひざをつき、弱よわしい手つきで土を掘りはじめた。
 ぼくは、じりっと一歩、前へでた。ぼくの足もとで、かれ枝がポキッと、音をたてた。
 レオナがふりかえった。とたんに、その顔に、いつもの人なつっこいわらいがひろがり、
「なんだ。きみだったの。よくここがわかったね。だけど、きみ、きょうはるす番じゃなかったのかい。」
「うん。いや、その、ちょっとな。それより、なにやってんの、おまえ。」
 ポリポリ頭をかきながら、ぼくはレオナに近づいた。
 すると、レオナはぼくの手に、シャベルをおしつけて、
「きみ、ちょっと、手つだってくれよ。このスミレを植えかえたいんだ。たのむよ。」
「スミレ?」
 ぼくは、一オクターブ、高い声をだした。
 見れば、レオナの足もとの切りかぶのところに、青いスミレが咲いている。
「どうだい。きれいだろう。きのう、散歩していて見つけたんだ。まわりに雑草がはえていたから、きのうは、草取りをしてやったんだ。そうしないと、雑草に負けちゃうからね。」
 なんだ、こいつ、草取りなんかしてたのか。てっきり、UFOか通信機をかくしていたんだとばかり思ったら……。

「宇宙人のいる教室」(さとうまきこ)より