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課題集 ミズキ3 の山

○自由な題名 / 池新
○生き物の命の大切さ / 池新
★テストはよいか、うれしかったプレゼント / 池新
○日の丸君が代、経験と知識、規則と自由 / 池新
○地球が出来上がるためには / 池新
 地球が出来上がるためには雨が重要であった。三〇〇〇年にわたって降り続いた長雨・大雨である。それは、焼けて溶けていた地球上のマグマと闘って、ついに海を作った大雨である。したがって、その降った分量はおおむね、今の海水の分量一・四×一〇の二十一乗キログラムぐらいである。しかも、地球全体の質量に比べれば一〇〇〇分の一にも満たない。
 最近、地球の誕生を究めようとする地球物理学が、日本の学者もまじえて、急激に進んでいる。その中で、最近、諸外国、主として米・ソの学説を土台にして、日本の若い学者から提唱された地球生成の説がある。そこでは、この雨が重要に扱われ、世界の学者の注目を浴びている。
 四十六億年ぐらい前、地球は宇宙空間に浮遊する火の玉で、その周囲にはおびただしい数の微惑星が塵のように漂っていた。広大な宇宙をベースにして見るから塵とは言うが、その一粒が直径一〇キロメートルほどのものも無数にあって、形成されつつあった太陽の周囲を回転していた。太陽も、星雲が収縮して火のかたまりになりつつ、円盤状に回転し、まさにこの時生まれようとしていた。
 幸いと言おうか、地球は今日、九つの惑星となっている星の一つとして残り、太陽の炎の中に吸いこまれなかった。この地球に、微惑星が引きつけられて衝突し、地球はその衝突エネルギーを蓄えつつ、次第に大きく成長していった。直径一〇キロメートルほどもある微惑星は、約五〇〇〇年にわたって地球に降りそそいだ。この衝突が、ある一定以上の圧力だと、岩石に含まれている水分が水蒸気となって放出され、同時に二酸化炭素も放出された。これが、地球を取り巻く最初の大気となり、無数の微惑星の衝突・合体のために、水蒸気を主とする大気の分量は膨大な厚さに達した。
 するとこのはかり知れないほどの厚さの大気は、温室のガラスのように、太陽から放射される熱を取り込むものの、それを逃がさないように機能した。いわゆる「温泉効果」である。そうして、地球の表面の温度が上昇しだした。
 また同時に、相も変わらず微惑星の衝突は続き、水蒸気の密度∵は異常に高まって、今、われわれの吸っている平均気圧(一気圧)の一〇〇倍、つまり一〇〇気圧ほどになり、地球の表面は一二〇〇度ぐらいの温度になってやっと止まった。それでも、一二〇〇度というのは、岩も石も金属もみんな溶かす温度であり、地球の表面は約五〇〇〇万年ぐらいの間、ぐつぐつと煮え立っていた。
 このころになって、微惑星の衝突も次第に少なくなり、地表の温度も少しずつ下がって、徐々に固まってきた。今、われわれの乗っている地球の骨格が出来上がってきたのである。
 地表の温度が下がってくると、雲(大気)もだんだん下りてきて、雨を落としはじめ、地表の低いところや、大きなクレーターで穴の開いた部分などに、たっぷり水を溜めていった。時に雷や稲妻を伴い、われわれの知らないほどのものすごい勢いと分量で、三〇〇〇年間、絶え間なく大雨が降り続いた。
 減ったとはいえ、未だ激突してくる大きな隕石。無数の火山の爆発と新たなマグマの流出。広大な大地の陥没。マグマを固め、岩石を打ち砕き、出来たばかりの陸を侵食する豪雨の轟きは、音と光の狂乱する耀げんようの舞台であった。その響きは、まだ空気が出来ていないから、振動は水蒸気と固まりつつあった固体の中を走り、重々しい響きとその反響に鳴動する、いわば地球の産声でもあった。

(村山貞也『人はなぜ音にこだわるか』)